富士フイルムと京都大学は、人工知能(AI)技術を用いて間質性肺炎の病変を高精度に自動で分類および定量化する技術を共同開発した。富士フイルムは2020年度中に、医療機関向けシステム上でこの技術を使用できる画像診断支援機能の実用化を目指す。

間質性肺炎に罹患(りかん)した肺での高精度な自動抽出のイメージ。左の写真の緑色部分が肺野で、画像を再構成して3D画像を作成できる(出所:富士フイルム)
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 肺胞に炎症や損傷が起こり、肺胞の壁が厚く硬くなる病気「間質性肺炎」には、原因が明確なものと原因が特定できない「特発性間質性肺炎(IIP)」があある。治療が困難な指定難病であるIIPは、特発性肺線維症(IPF)などいくつかの病型に分類されるが、胸部CT画像では複雑で多彩な異常所見が見られることが多い。発症の初期段階で病名を確定することが難しい場合や、医師が治療前後にCT画像の病変の性状を目視などで比較し、経過観察しながら病名を確定して治療方法を選択していく場合がある。

肺の7種類の病変性状を識別し、CT画像中の肺野内を自動で分類、定量化して表示するイメージ(出所:富士フイルム)
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 IPFは病気の進行に伴ってCT画像に写る病変の性状が徐々に変化する。中には「急性増悪」と呼ばれる急激な病状の変化があるため、「急性増悪」の予兆を早期に発見することが重要となる。さらに、近年はIPFに対して肺が硬くなるスピードを抑える抗線維化薬が市販され、「治療効果を画像上で定量的に評価したい」という医師のニーズも高まっている。

同一患者の過去の検査画像(A)と現在の検査画像(B)を比較したイメージ。定量値をグラフ表示し、性状別または領域別に切り替えて比較できる(出所:富士フイルム)
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 今回共同開発した技術は、AI技術を活用したソフトウェアが、CT画像から肺野内の気管支、血管、正常肺および、網状影やすりガラス影、蜂巣肺など肺の7種類の病変性状を識別して自動で分類・測定することで、間質性肺炎の病変を定量化する。さらに、肺野内における病変の分布と進行状態が詳細に確認できるように肺野を12の領域に分割し、その領域ごとに病変の容積と割合を表示する。

 富士フイルムと京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学の平井豊博教授は、2018年春から今回の技術の開発に関する共同研究を開始した。共同研究では、富士フイルムが開発した間質性肺炎の病変を分類および定量化するAI技術を、京都大学が保有する症例データに適用し、識別性能の評価と改善のフィードバックを繰り返した。各性状が取りうる画像パターンのバリエーションを分析し、さらに改良することで、高精度な識別性能を持つ今回の技術を実現したという。