全日本空輸(ANA)と豊田自動織機は2019年3月26日、空港内でコンテナを運搬するための牽引車(トーイングトラクター)を自動運転する実証実験を報道関係者に披露した。係員が運転席にいるものの非常時のブレーキ以外は操作しないレベル3相当の実証実験で、2社は早ければ2020年の実用化を目指す。

佐賀空港内のコースでコンテナを牽引しながら走行する電動牽引車。運転席の従業員は万一に備えブレーキペダルに足を掛けているものの、加減速やハンドル操作などの運転操作をしない
[画像のクリックで拡大表示]

 市販の牽引車とほぼ同サイズの電動車体にレーザーレーダー(LiDAR)3基と車体の周囲を撮影するカメラ、GPS(全地球測位システム)、角速度センサー、速度センサーを装着。実証実験では佐賀空港の制限エリア内に設けた全長約300メートルの周回コースと全長約100メートルの直線コースを、それぞれ最大時速21キロメートルで走行する。報道公開では、人や他の車両、カラーコーンといった障害物に近づくと自動で徐行・停止。他の車が移動するなどして障害物がなくなると、その旨を自律的に判断して自動で運転を再開する様子も披露した。実証実験は約2週間展開する。

 今回の試作車では、牽引車の底部にカメラとLEDを設置してアスファルトの模様によるパターンマッチングで現在位置を特定する機能も実装した。路面が雪で覆われると使えないといった課題はあり他の技術との組み合わせが前提になるものの、「アスファルトの模様は特徴量がはっきりしている。空港という限られたエリアであれば現在位置を特定する機能を低価格に実現しやすい」(豊田自動織機の一条恒常務役員)といったメリットがあるとする。

 ANAグループは2018年2月と2019年1月の2回、羽田空港内でバスの自動走行実験をSBドライブと実施している。空港ターミナルと航空機との間で受託手荷物や貨物などを搬送する牽引車にも自動運転を採り入れることで、係員の作業負担が大きい地上支援(グランドハンドリング)や貨物などのオペレーション改善を急ぐ。「今回は最初のステップとして他の車両が混在しない環境で実証実験するが、今後は混在環境や羽田・成田といった混雑空港でのテストにもチャレンジしたい」(ANAの清水信三専務執行役員)。

豊田自動織機の一条恒常務役員(左)とANAの清水信三専務執行役員。後方左が完全自動運転できる燃料電池駆動の牽引車のコンセプトカー、後方右が今回の実証実験用の電動牽引車
[画像のクリックで拡大表示]

 報道公開の会場には、豊田自動織機が試作した次世代の牽引車のコンセプトカーも展示した。トヨタ自動車の「MIRAI」と同じ機構を搭載した燃料電池車(FCV)で、運転席がないレベル5の完全自動運転を想定している。「2030~40年といった長期的な視野では完全無人を目指している」(豊田自動織機の一条常務役員)。