日立製作所とドイツ人工知能研究センター(DFKI)は、スーツ型ウエアラブルデバイスを着用した作業者の身体負荷を定量評価し、身体の部位ごとに作業動作の改善点を提示するAI(人工知能)を開発した(ニュースリリース)。模範的な動作との違いを身体の部位ごとにフィードバックするなど、作業支援や危険行動防止に向ける。

 両機関は、2017年3月に眼鏡型デバイスとアームバンド型デバイスから取得したデータを定量化し、「ねじ締め」などの作業内容を認識するAIを開発している(関連記事)。このAIは、どんな作業を実施したのか、作業内容を認識できるものだった。今回開発したAIはこれを発展させたもので、作業をどのように行ったのか、身体の動きや力加減といった作業の様子が認識可能になった。

AIによる作業動作認識と、作業者へのフィードバックによる支援の流れ
(出所:日立製作所)
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模範作業者(緑色)と作業者(青色)動作の違いをリアルタイムに計測し、比較・評価するための実験用画面。【左上】身体負荷の評価の時間推移。【右上】課題の見つかった動作の動画。動画撮影は必須でないものの、併用することで把握しやすくする。【左下】各身体部位の状態推移。【右下】各身体部位の動作に対する評価。
(出所:日立製作所)
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 具体的には、2つの技術が含まれる。1つは、加速度、地磁気、角速度センサーのデータをリアルタイム分析し、作業負荷を認識、定量評価する技術。人間の主要な動きの識別に必要な30カ所以上の関節部位の動作をスーツ型ウエアラブルデバイスで計測し、身体の各部位の状態認識モデルを個別に機械学習させたAIで解析する。各部位の状態が組み合わさった動作の計測データをAIで認識し、作業によって身体にかかる負荷をディープラーニング(深層学習)による時系列データ処理で定量化する。

 もう一つは、リアルタイムに身体の負荷を推定し、適切な作業姿勢を提示する技術。あらかじめ計測した模範作業の動作データと作業者の動作データを部位ごとに自動比較し、重要な違いを生んでいる作業箇所と身体部位をAIが特定する。例えば、重量物の持ち上げ時に「腰とひざの動きが模範動作と異なる」など、身体負荷への影響が大きい部位の評価を作業者に分かりやすく示す。作業中の様子を動画撮影しておけば、分析結果と組み合わせることで作業者の改善点が視覚的にも把握しやすくなる。

 日立とDFKIは今後、今回の技術を作業支援や危険行動の防止に活用し、さまざまな現場における作業者の安全確保や健康管理、作業教育の効率化につなげる。将来的には、身体の動作を測定して評価するAIとして、スポーツ分野やエンターテインメント分野への応用も検討していく。

スーツ型ウエアラブルデバイスを装着した様子
(出所:日立製作所)
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