住友ゴム工業はドイツのライプニッツ高分子研究所(Leibniz Institute of Polymer Research Dresden)と共同で、天然ゴムの破壊メカニズムを研究し、き裂先端の結晶化挙動を明らかにした(ニュースリリース)。同社は、この成果を基に耐摩耗性の高いゴムの開発を進める。

 両者は今回、天然ゴムを伸ばすと生じる結晶化について実験を行った。この場合の結晶化とは、天然ゴムを伸ばしたときに伸長方向に分子の並びがそろう現象。タイヤで一般的に使われる合成ゴム「SBR」では発生せず、天然ゴムのき裂成長や破断に大きく影響すると考えられている。

 実験では「ひずみの拘束」の影響を考慮しつつ、天然ゴムのき裂先端における変形の観察を目指した。タイヤは、接地して回転しているときはひずみの拘束を受けながら周期的に変形を繰り返すためだ。これはゴムが自由変形できない状態であり、例えば金属プレートに接着した薄い円板状のゴム試験体を厚み方向へ伸ばすと幅(半径)方向に縮もうとするが、金属プレートに接着されているため、金属と接している部分のゴムが剥がれない限り収縮できず、見かけの体積が膨張する。

 両者は、ゴムが伸長した際の幅方向への収縮を抑えることでひずみの拘束下にあるき裂先端の挙動を再現し、かつX線による結晶構造の解析を可能にするために、伸長方向に対して幅方向が十分に広い天然ゴムの平面試験片を用意。試験片の伸縮を繰り返した場合のき裂先端について、X線広角散乱を用いてゴム内部の結晶化挙動を観察した。

 その結果、短冊試験片を伸長した場合は天然ゴム分子のほとんどが伸長方向にそろって結晶化する一方、十分に広い天然ゴム平面試験片のき裂先端では、ひずみの拘束によって分子の並びが短冊試験片に比べてそろわず、結晶がさまざまな方向を向いていることが分かった(図)。

図:試験片を軸方向(方位角)に回転させたときのX線回折像の変化
結晶が伸長方向にそろっていれば回転角に関係なく0°と同じ回折像を得られるが、実験結果では、結晶の並び方を反映している黄色のスポットが角度をずらすにつれて消えていく。すなわち、結晶がさまざまな方向を向いていることが分かる。(出所:住友ゴム工業)
[画像のクリックで拡大表示]

 充填材としてカーボンブラックを加えたゴム試験片では、カーボンブラックを混ぜていないゴムより結晶が小さくなる現象も確認できたという。さらに、伸縮を繰り返す際の結晶化の状態を観察したところ、伸長時に生じた結晶は試験片が元に戻る際に融解するものの、元に戻るときの方が伸長時よりも結晶度が高いという結果も得られた。

 こうした成果から、結晶の並び方を制御することで、従来に比べて破壊されにくいゴムや、耐摩耗性の高いゴムの開発が期待できるという。両者は既に、ボイドの発生からき裂発生までのメカニズムを明らかにしている(関連記事)。タイヤの主原料の1つである天然ゴムの破壊現象の解明したことで、同社は今後性能の持続性に優れ、環境負荷の少ないタイヤを実現する材料の開発スピードを高める。