政府の知的財産戦略本部が2018年9月13日に開催した「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)」第7回会合は、海賊版対策の中間まとめ案を巡って怒号に近い批判の応酬となった。

第7回会合の様子
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 事務局が示した中間まとめ素案は、第1章で海賊版サイトの被害実態、第2章で9つの総合対策、第3章は対策の1つであるサイトブロッキングを法制化する場合の制度設計について議論をまとめたもの。

 委員の間で意見が分かれていたブロッキング法制化の必要性について、まとめ案は第2章で両論併記したうえで「本検討会議において合意を見ることはできなかった」と明記した。一方で第3章は、他の手段に効果が期待できない場合、司法判断に基づくブロッキングであれば憲法上の問題が生じる可能性は低いと整理した。

 この中間まとめ案に対し、弁護士の森亮二委員は「他の海賊版サイト対策に『効果が期待できない』といった意見は出ておらず、この段階でのブロッキングは元より違憲の疑いが濃い」として、第3章のうちブロッキングの具体的な制度設計を議論した箇所を削除するよう求めた。「著作権侵害でブロッキングを認めれば、名誉毀損など別の権利侵害にも広がる恐れがある。このまとめ案のままでは、両論併記という事実だけ残して、そのまま法制化に向かってしまう」(森委員)。

 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の前村昌紀委員も、中間まとめ案について「(ブロッキングの制度設計を議論した)第3章がメインであるかのようにしか読めない。いびつだ」と異論を述べた。東京大学の宍戸常寿委員は、ブロッキング法制化は他の対策の実効性を見ながら中長期的に検討すべきだとし、第3章は本文でなく参考の位置づけにとどめるよう求めた。

 一方、日本写真著作権協会の瀬尾太一委員は「(ブロッキングについて)タスクフォースで議論した量を考えれば、まとめ案の構成に違和感はない。大幅な削除や恣意的な改変はせず、両論併記のままとすべき」、弁護士の福井健策委員も「今回の議論は大事な資産であり、あるがままに載せるべき」として、森委員が主張する削除案に反対した。

通信の秘密は「海賊版サイトをブロッキングされない自由」なのか

 カドカワの川上量生委員は今回の中間まとめ案に賛同するとともに、他の委員がブロッキング法制化に反対する根拠について疑問を表明した。「海賊版サイトへのブロッキングがなぜダメか、明快な理由をどの委員からも聞けなかった。断片的には森先生は『通信の秘密』、宍戸先生は『プライバシー権』、インターネット業界は『インターネットの自由』を理由に挙げている。だが海賊版サイトの運営は違法行為であり、ブロッキングのほかに止める手段がないサイトもある。通信の秘密、プライバシー権、インターネットの自由は、そうした海賊版サイトも止めてはならないとするものなのか。『私は海賊版サイトには反対だが、海賊版サイトをブロッキングされない自由は全力で守る』と主張するのか。皆さんは『通信の自由』など高尚なものを守ると主張しているが、実際に守っているのは『海賊版サイトをブロッキングされない自由』ではないのか。それは本当に守る価値があるのか。そこまで突き詰めたうえで判断してほしい」(川上委員)。

 この川上委員の主張に、まず宍戸委員が反論した。まず憲法や法律が定める通信の秘密について「表現の自由やインターネットの自由、プライバシー、安全・安心な通信を保護する複合的なもの」と整理したうえで「通信の利用に必要な限度を越えて情報を知得・窃用されないようにすることで、大量監視などから一般ユーザーを保護するのが通信の秘密。それを守る結果として、海賊版サイト運営者の利益も守られてしまうのは事実だ。だからといって、一般国民を保護する通信の秘密を『海賊版サイトに利するから』との理由で制限することには慎重であるべきだ」とした。

 続いて森委員は「国民がインターネットで不当な監視を受けない利益を守る方法は、国ごとに異なる。EUはプライバシー保護、米国は表現の自由、日本は通信の秘密。『ドイツでやっているから日本も大丈夫』という議論は誤りだ。宍戸委員が言うように、日本はプライバシーや表現の自由を守る強力な制度がない分、通信の秘密に依存している面がある」と主張した。

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