普及期に突入したRPA(ロボティックプロセスオートメーション)だが、ロボット作成に手間がかかるなど苦労は少なくない。典型的なRPAの失敗パターンや原因、対策について解説する。

 RPAの本格導入にはさまざまな落とし穴が待ち構えている。普及が始まったばかりで、導入・運用のノウハウが十分に確立されていないからだ。今回は運用に入ってから問題が発覚する「ロボットが間違いを犯す」「ロボットが止まる」「メンテナンスできない」といった3つの落とし穴を取り上げる。これらの落とし穴にはまり込むとロボットの運用工数が跳ね上がり、RPAの導入効果を引き下げてしまう。

RPAの5つの落とし穴
今回は運用時に直面する落とし穴3~5を解説する
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 以下では、運用時に直面する落とし穴の典型例と回避策、対応策を説明しよう。

落とし穴3
ロボットが間違いを犯す

 ロボットの設定内容で抜け漏れやミスがあると、処理を間違えてしまう。典型的な問題発覚シーンは次のようなものだ。

 通信工事会社A社は、工事の依頼書から作業指示書を自動作成するロボットを導入した。ある日、利用部門から「指示通りに現場に行ったのに工事ができなかった」とクレームが入った。ビル内工事が必要なのに、入館手続きが済んでいなかったという。RPA担当者が調査してみると、「ビル内配線あり」「入館アポ必須」というパターンでの処理をロボットが間違えていた。

 ロボットが処理を間違えるのは、設定内容に抜け漏れやミスがあるからだ。SHIFTの菅 仁技術推進部RPA推進グループ長は「よく見かけるのは、条件の網羅が不十分というパターン」という。

 この原因に対する解決策は大きく2つ。1つは設定内容の正しさをテストで確認する方法だ。RPAのテストにはコツがある。(1)ロボットの機能、(2)業務プロセス、(3)エラー検知と処理の継続の3つに着目すると、効率よくテストを実施できる。もう1つは、組み合わせパターンの多い条件分岐などの複雑な処理は人手で実施すると割り切る方法だ。単純な処理だけをロボットに任せる。

 パーソル プロセス&テクノロジーのRPA活用支援部RPAコンサルティンググループに所属する久保田有生氏は「数字を集計する業務では、参照するExcelシートの変更でロボットが間違える場合がある」という。特に問題になるのが、列が増えるケースだ。手作業での集計用にユーザーが追加したり、Excelシートでの管理項目を増やしたりした場合に発生する。解決策として「参照する表のヘッダー(1行目)をチェックする作業をロボットに設定するといい」とアドバイスする。

落とし穴4
ロボットが止まる

 基幹系システムから情報を抽出して、夜中に自動集計するロボットを運用していた。ある朝、出社するとロボットが停止していた。再度起動してもエラーで動かない。ロボットが処理するはずだった業務を手作業で実施して、1週間ほどその部署の残業時間が長くなってしまった。

 RPAではこんなトラブルに遭遇してしまう場合もある。デロイトトーマツコンサルティングの中村吉信執行役員は「ロボットは環境に敏感に反応するので、しばしば止まってしまう」と指摘する。

 例えば、操作対象の業務システムでUIの変更があると、ロボットが操作するボタンやフォームを認識できなくなって停止する場合がある。ネットワーク環境が混雑していて、作業を始める前までに前の処理を完了できないとエラーとなって止まる場合もある(処理の追い越し)。PC上で動作するロボットでは、Windows Updateやウイルススキャンといった他処理の割り込みでロボットが停止する場合もある。

 ロボットが頻繁に止まると、業務負荷が高まる。利用部門はロボットの復旧までを手作業でカバーしなければならないし、ロボット保守担当者はロボットの復旧に当たらないといけないからだ。

ロボットが止まると業務負荷が高まる
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 よく止まるロボットには2つの原因がある。1つめは設定の品質が悪いというパターン。2つめは操作対象の変更にロボットの設定変更が追随できていないというパターンだ。

 設定の品質が悪いというのは、止まりやすいポイントを意識した設定ができていないということ。例えば、画面上のボタンの指定には複数の方式があり、方式ごとに精度が異なる。こうした認識が不十分なまま、精度の低い方式を使って設定していたりする。また、作業間の待ち時間の設定がいい加減だと、処理の追い越しが多発する。

 操作対象の変更にロボットの設定変更が追随できていないと、操作対象のUI変更で停止する頻度が高くなる。これはロボットが増えるほど問題が大きくなる。住友林業情報システムの成田裕一ICTビジネスサービス部シニアマネージャーは「基幹系システムの改修で画面を大きく変えたところ、70体のロボットのうち、10体のロボットが止まったという経験がある」と明かす。

台帳で操作対象を明確に

 設定の品質については「ロボットの作成を利用部門に任せると、どうしても品質は低くなりがち」(日立ソリューションズの井手悦雄IT・情報セキュリティ本部経営基盤システム部主任技師)。そこで、品質チェック体制を作る。具体的には利用部門が作成した後、システム部門がチェックと仕上げをするという体制だ。

 操作対象の変更については、ロボットと操作対象をセットにして管理する台帳を作成するのが対策になる。住友林業情報システムの成田シニアマネージャーは「ロボットの台帳システムを作り、ロボットが操作している画面やボタンを検索できるようにした」と話す。操作対象のシステムで改修があった場合、台帳で検索して影響する可能性があるロボットを見つける。その後、必要に応じて改修する。

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