会社のITシステムが使いにくければ、生産性は上がらず、働き方改革など不可能だ。SEは今、操作性に優れたユーザーインタフェース(UI)を備えたシステムの開発スキルが求められている。そのノウハウに迫る。

 「企業システムでも動けばいい、使えればいい、という時代は終わった」。こう強調するのは、ソフトウエアベンダーのアステリア(旧インフォテリア)で、研究開発担当を務める北原淑行執行役員だ。アステリアは2017年4月に英国のデザインコンサルティング会社を買収し、自社製品のUI(ユーザーインタフェース)のデザイン向上に注力している。

 消費者向けのシステムに比べ、企業システムのUIデザインは軽視されがちだった。利用者が自社の社員や関係者に限られ、「必要な機能の開発に費用が優先され、UIデザイン向上の費用は削られやすい」とNTTデータの古澤暁子 公共・社会基盤事業推進部 プロジェクト推進統括部 技術戦略担当 シニア・エキスパートは話す。

 ところが今、アステリアのように企業向けのシステムであってもUIデザインに力を入れようという機運が高まっている。

 UIデザインが重視される背景は3つある。1つは利用者の多様化だ。労働力不足の中、正社員だけで構成していた以前と異なり、企業内には契約社員や協力会社の担当者など、様々な人が勤務するようになった。外国人を雇用する企業も増えつつある。「慣れれば使えるようになるだろう」という想定で作ったUIデザインのシステムでは、使いこなせない人が増えている。

ユーザーインタフェース(UI)のデザインに求められるポイント
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 エンドユーザーのシステム利用状況に目を向けると、利用端末はPCに、タブレットやスマートフォンのモバイル環境が加わっている。「外出先でスマートフォンを利用して、営業日報を入力するために社内システムにアクセスする」といった光景を随所で見るようになった。

 最近、企業にとって重要な課題となってきたのが労働生産性の向上だ。NTTデータの古澤シニア・エキスパートは「システムの使い勝手が、労働生産性を下げていると考える企業も出てきた」と話す。社会人の多くは、私生活ではスマートフォンの最新アプリを使いこなす。企業システムも消費者向けアプリと同等の使い勝手を確保すれば、より使いやすくなる。

ITエンジニアもUXに取り組める

 UIデザインはデザイナーに任せたほうが良いものができる―。こう考えるITエンジニアは多いかもしれない。しかし実際にシステム開発の現場を見れば、専門のデザイナーが参画する案件はまだまだ少数だ。デザインを専門とはしないITエンジニアが画面設計を担うことがいまだ多い。

 UIデザインの重要性が増してくる開発現場で、ITエンジニアが少しでもデザインのことを知っておけば、誰でもどのような端末でも使いやすいシステムが増えるはずだ。

 特に今、UIデザインとともにシステム開発のデザイン担当者の中で重視されているのが、エンドユーザーの利用経験を重視する「UX(ユーザーエクスペリエンス)」の考え方だ。UXというと難しく聞こえるが、「エンドユーザーのシステムの使い方を自分の目で観察して、どのような使い方をしているかを押さえることがポイント」とNECの太田知見 コーポレートインキュベーション本部 ビジネスデザインセンター クリエイティブマネージャーは話す。システム活用の現場を直接見るだけでも、UXの実現に近づくことはできそうだ。

 もう1つ、企業システムのUI開発に携わる専門家たちが重視しているのが、誰でも区別なくシステムを使えるようにする「ユニバーサルデザイン」だ。これまで企業システムでは縁遠い概念だったが、企業内で働く人が多様化する中、UIデザインを考えるうえでは欠かせなくなっている。

 以下ではUIデザイン、UXデザイン、そしてユニバーサルデザインの3つに分けてITエンジニアが今からでも取り組めるポイントを紹介する。今回はUIデザインの一つめのポイントを紹介しよう。

UI、UXとユニバーサルデザインの関係
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