技術者は問題解決を急ぎたいために、最初から深掘りの質問をしようとする。だが、それでは相手から本当のニーズを引き出せず、交渉に行き詰まる。まずは広く浅いインタビューが重要。問題質問などの手法もマスターしよう。

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 土屋君という人物を通じて、仕事をうまく進めるための現場コミュニケーションのポイントをお伝えする。今回は、コミュニケーションで大事な3つのプロセスのうち、「紡ぎ出す」について解説しよう(図1)。

図1●現場コミュニケーションのための3つのプロセス
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水田課長から言われた気になるひと言

 土屋が「見せる」と「整える」を意識するようになってから2カ月たった。会議やミーティングでは「整える」ことを意識し、話が進みやすくなるようにコミュニケーションの取り方を意識的に変えるようにした。議論の内容も意識的に「見せる」を心がけてきた。その結果、前よりはコミュニケーションが良好になりつつあり、以前に比べるとスムーズに仕事が進むようになってきている。

 それでも土屋は浮かない表情だ。上司である水田課長がつぶやいた「解決策がいつもワンパターンだよね」というひと言が、心に引っ掛かっていたのだ。

 実は先日、スイセー社との打ち合わせのときにちょっとした問題が発生した。顧客であるスイセー社の木元課長やエンドユーザーの要望を基に業務フローを整理して、承認をもらって開発に着手したが、木元課長から変更を求められたのだ。「法律改正による影響で、このままではイレギュラー処理が多くなる。汎用的な対応ができるようにしてほしい」というのが、木元課長の要望だ。

 すでに開発が始まっていることもあり、別案件として対応したいと土屋が伝えた。しかし木元課長は「それではシステムを刷新する意味がなく、なんとか現状の工数のままで対応してほしい」と主張し、話が並行線をたどってしまった。

 そこで土屋は「仕様変更を受け入れる代わりに納期を1週間延長する。追加工数については今後の開発案件で吸収していく」という妥協案を考えた。水田課長の了承を得ようとしたところ、「ワンパターン」と指摘されたのだ。

 土屋としては、相手の要求と折り合いをつけた良い妥協案だと思っていただけに、水田課長のひと言が頭から離れなかった。そこでランチタイムに水田課長に「ワンパターン」という発言の真意を尋ねてみた。

 水田課長は手元にあった紙ナプキンに図を書き始めた。そして「今回のスイセー社との件で、君が考えた案はどのあたりになるか印をつけてみて」と言う。土屋君が紙ナプキンの上に×印をつけた(図2)。「やっぱり土屋君はまだわかってないな。君がやっていることは、妥協だよね。本当の意味でお互いのニーズは満たせていないように感じるよ。ワンパターンと私が言った理由もそこにあるんだ」

図2●水田課長と土屋君が紙ナプキンに描いた図
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 水田課長とそう言いながら、一番右上に×印を書き足した。

「目指すのはここだよ。そのためにニーズを紡ぎ出すんだ」

 土屋は水田課長の指摘に納得しながらも、「紡ぎ出すとは言うけれど、どうすればよいのだろう」との疑問が頭をもたげた。

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