会議やミーティングの流れを見せるテクニックをマスターしても、参加者がお互いに自分本位になってしまえば目指すゴールにたどり着けない。誰もが「自分を尊重してほしい」と思っていることを前提に会議の場を整えよう。

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 土屋君という人物を通じて、仕事をうまく進めるための現場コミュニケーションのポイントをお伝えする。今回は、コミュニケーションで大事な3つのプロセスのうち、「整える」について解説しよう(図1)。

図1●現場コミュニケーションのための3つのプロセス
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見えるようになったから起きた混乱

 土屋が見せる化を始めて、1カ月がたった。スケッチブックをノート代わりに持ち運び、いろいろ書き出す土屋君に興味を持ってくれる人も出始めた。最初は興味本位で見ていた同僚や後輩が、徐々にまねする動きも現れた。ホワイトボードやノートを使うことで、相手の理解が進み、議論がより活発になることを経験し、まねしてみようという気になったようだ。「いつもと違う流れ」が少しずつでき始めている。

 一方で、想定外の事態も起きた。時によって、話が広がりすぎて、迷走したりするようになったのである。話のプロセスが見えるようになったため、ミーティングや会議で参加者にもっとこうしたいという欲が出てくるようになったのだ。

 先日も顧客であるスイセー社の木元課長と、窓口業務の機能追加について打ち合わせをした。その際、スケッチブックでとっていたメモ(ファシリテーショングラフィック)がとても役に立った。ところが、窓口業務での印刷機能に新たな要望を出したいと木元課長が言い出したのだ。つまり追加要件が膨らみそうな雲行きになってしまった。

 土屋は、今以上に機能を追加すると、納期の関係で品質低下のリスクにもなりかねないことを説明して、なんとかその場は納めた。なんとも気まずい雰囲気のミーティングになってしまい、土屋は次回のミーティングはどうなるのかと心配になってきた。

 上司である水田課長に報告すると、「土屋君、場を整えないと振り回されるよ」と言われてしまった。

解説
「整える」とはどういうことか

 ミーティングや会議を開催する際に目的をはっきりさせて臨むことは、誰もが知っている鉄則のはずだ。しかし、時間に追われて準備する余裕もなく、やむを得ずその場に臨む場合もあったりする。自分が一参加者なら、準備せずに受け身の姿勢で参加する場合もあると思う。

 そのミーティングで話が迷走したり、形式的なものになったり、そもそも目的がよく分からないまま進んだりしては意味がない。それを避けるためには、ミーティングや会議という場を「整える」ためのノウハウが大切になる。

 「整える」とは、参加者がお互いに自分本位にならないようにコミュニケーションの取り方を整えるということである。ノウハウと言っても、難しい話ではない。「いつもと違う流れ」は小さな事の積み重ねの中で起こるのだ。ミーティングや会議を整えるためのポイントは「環境」「プロセス」「自分自身」の3つに分けられる。

 その日の午後、土屋は同僚の金城と後輩の不知火を含め5人で打ち合わせの場を持った。テーマは不知火が担当する案件で起きている技術的障害をどう解決していくかということであった。

 ミーティングは金城がリードして始まった。会議室に入ると、金城が道具箱のようなものから参加者分の付箋やペンを取り出して配り始めた。そして金城の進行で打ち合わせが始まった。

「お忙しい中、ありがとうございます。では、さっそく先日の障害の件でミーティングを開始します。時間は1時間ですが、今日は解決のアイデアを出し合って、具体策を決めるところまで行きたいと思っています」

「進め方ですが最初に不知火君から現状を10分ぐらい説明してもらって、その後、付箋とホワイトボードを使ってブレーンストーミングを行う形でアイデア出しをしようと思いますので、思いついたことはどんどん出してください。こんな段取りで進めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか」

 金城の問いかけに皆がうなずき、不知火の説明が始まった。ミーティングは1時間後、当面の対策案としてレスポンスのモニタリングを実施することとし、作業分担と今後のスケジュールを決めて終わった。

 土屋は金城のスムーズな進行に感心しながらも、自分の進め方と何が違うのだろうかと思いを巡らせていた。というのも、土屋が進行するときは、発言するメンバーが限られるし、全体的に議論が低調で意見も少ないからだ。結局、土屋の独り舞台になることも多い。

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