経済産業省が選ぶ初代「DXグランプリ」に輝いたANAホールディングス。同社は年間20件を超えるPoCを実践し、その半数以上を実サービス化している。その秘訣をANAのデジタル化キーパーソンが伝授する。(本誌)

 全日本空輸(ANA)はここ数年、PoCを実施し、半数を超えるアイデアを実サービスに結びつけてきました。「IoT(モノのインターネット)犬おりソリューション」「AIによる整備不具合の発見」などです(表1)。

表1●全日本空輸が実践しているPoCプロジェクトの例
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 社外の方から「ANAのPoCの進め方を教えてほしい」と言われることも少なくありません。そこで、今回ANA流のPoCの進め方を解説します。我々も試行錯誤の最中なのですが、お役に立てれば幸いです。

PoC開始の承認プロセスを簡略化

 筆者はANAのIT部門である「デジタル変革室」に所属しています。デジタル変革室には4つの「部」が存在しており、筆者は「イノベーション推進部」を統括しています。イノベーション推進部のミッションはテクノロジーを駆使して、既存業務を大きく効率化させることです。

 当社がPoCを積極的に始めたのは筆者がイノベーション推進部を任された2017年4月からのことです。最初に着手したのは、PoC開始の承認プロセスを簡略化することでした。

 当時は一般的なIT部門のように、年間のIT化計画と予算があり、それに従ってプロジェクトが進められていました。案件を実施するには標準化プロセスによって定められた手順に沿ってドキュメントを作成し、承認を通過しなければなりません。いわゆるウオーターフォール型の業務プロセスだったのです。

 イノベーションを起こすには、市場に次々と登場しているテクノロジーを社内にうまく取り込むことが必要です。そこで、従来の承認とは別に、PoCプロジェクトを開始できる新しいルールを設けました。

 当時のデジタル変革室(厳密に言うと、2017年時点の組織名は「業務プロセス改革室」)には、筆者を含めて3人の部長がいました。この3部長がOKを出せばPoCを開始してよいというルールにしたのです。3人の部長の共感を得ればよいということで、「PoC共感会議」と名付けました。さらに、PoC用に予算を別枠で確保しました。

 プロセスを簡略化した結果、2017年度は10件のPoCを実施しました。翌2018年度は20件を超えました。2019年度は25件以上のPoC実施を見込んでいます。

 筆者が考える「失敗しないPoCのコツ」は大きく3つあります。それは、「PoCのトリガーを作る」「PoCの実効性を上げる」「デザイン力を高める」の3点です(図1)。以下で順を追って解説していきます。

図1●全日本空輸のPoCのポイント
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