塩漬けERPを脱出するために欠かせないのが徹底的なアドオンソフトの削減だ。ERP刷新を支援するためのツールが充実しており、導入自体の難易度は下がっている。導入が難しそうなクラウドERPも工夫で使いこなせる。

 リビルドかコンバージョンか。塩漬けERPを刷新する方式を決めたら、今度は実際にプロジェクトに取りかかる。プロジェクトを成功に導くために、押さえるべきポイントが3つある。アドオンソフトの削減、ツールの活用、そしてクラウドERPを導入する場合の発想の転換だ。

 以下では3つのポイントについて詳細に見ていこう。

ポイント1
アドオンを徹底的に削減する

 これまで見てきたように、リビルド、コンバージョンのいずれの方式で塩漬けERPを脱するにしても、アドオンソフトを徹底的に削減することは必須だ。アドオンソフトが残っている場合、せっかくERPを刷新してもバージョンアップの妨げになり、再び塩漬けERPを生む温床になるからだ。バージョンアップによる機能追加でERPが進化できるように、アドオンソフトを削っていくことが重要になる(図1)。

図1●新ERPを導入する際のアドオン移行の考え方
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 バージョンアップを含めた保守性を高める観点から、優先的に減らしたいのが高度な処理ロジックを実行するアドオンソフトだ。例えば、ERPから複数のデータを取得して合算しERPに戻す、といった処理だ。こうしたアドオンソフトは、ERPのデータテーブルやほかの処理に影響を与える可能性があり、バージョンアップだけでなく、後から追加される新機能の利用の妨げになることもある。

 実際に多く利用されているのが、「締め請求」を実現するアドオンソフトだ。締め請求は、月次などの一定期間でまとめて請求処理を実行する。日本企業に独特の商習慣で、以前のSAPのERPには締め請求の機能はなかった。そこで2000年前後にSAP ERPを導入した多くの企業がアドオンソフトで締め請求処理を独自に実装した。

 現在、締め請求の機能はSAPのERPに標準機能として実装されている。「標準機能で代替することで、削除できるアドオンの代表例だ」とTISの窪田部長は話す。

BIのSaaSを帳票代わりに利用

 次に優先的に削除したいのが、各企業独自の入力画面や帳票を実現するアドオンソフトだ。ERPパッケージそのものの動作に影響を与えるケースは少ないが、多くの企業が利用しており、基幹系システムの複雑さを増す要因になっている。

 画面や帳票を実現するアドオンソフトを削減する際にもまず、ERPパッケージの持つ標準機能で代替できるかどうか考えよう。S/4HANAでは以前からSAPが提供しているクライアント/サーバー型の「SAP GUI」に加え、消費者向けサービスのようなデザインを採用したWeb画面Fioriも用意しており、様々な選択肢がある。

 帳票の場合、標準機能で代替が難しいケースでは、ERPベンダーが提供するほかのパッケージソフトやSaaSなどを利用して代替する。

 SAPのERPを利用している場合は「SAP Analytics Cloudの利用をベースにすることで、帳票を削減できる」とアクセンチュアの増野マネジング・ディレクターは話す。Analytics CloudはBIの機能をベースにしたクラウドサービスだ。BI機能を使ってユーザーがほしいデータをERPから自分で入手できるようになるため、データ提供を目的とした帳票を削減できる。

 こうした方法を採っても、実際には全てのアドオンソフトを削減するのは難しい。データ連携機能を実現するアドオンソフトなどは、外部システムとの関係などから残さざるを得ないケースもある。そうした場合は、最近のERPが実装しているAPI連携機能などを利用して作り変えられないかを検討して、アドオンの削減を目指そう。

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