塩漬けになったERPを刷新するためには2つの方式がある。決め手は基幹系システムを刷新する目的だ。メリット、デメリットを押さえて自社に合った方式を選ぼう。

 ERPを使って構築した20年間ほぼ変わらない基幹系システム。このシステムを刷新するには、どのような方式を採るべきなのだろうか。

 刷新の方式は大きく2つある。1つは、従来のERPパッケージにとらわれずにERPを新規導入して、新たな業務プロセスや機能を持った基幹系システムを構築する方式だ。

 もう1つは従来のERPの動作を決めるパラメーター設定やデータなどをそのまま新ERPに引き継ぐことで、従来のERPと同じ業務プロセスや機能を新しいERPでも実現する方式である。

 前者を「リビルド」、後者を「コンバージョン」と呼ぶ。リビルドが新規導入であるのに対し、コンバージョンはバージョンアップに近い。

 リビルドもコンバージョンも、SAP ERPからS/4HANAへの移行など、ERPベンダーが明示的に後継製品と位置づけている製品に移行する場合の方式だ。ベンダーも異なるERPを導入する場合は、通常の新規導入となる。

経営戦略や利用状況から判断

 リビルドかコンバージョンか。どちらの方式を採用するかを決めるためには、「プロジェクトの開始前に現状を分析して、基幹系システムに求める目的を明らかにすることが重要だ」とTISの窪田明子サービス事業統括本部ERPコンサルティングユニットERPコンサルティング第2部長は強調する。

 例えば、デジタル化の推進の基盤としての役割を基幹系システムに期待しているかどうかだ。S/4HANAやOracle ERP Cloudなど、この数年のうちに登場した新しいERPは、IoT(インターネット・オブ・シングズ)の実現を支援する機能などが相次ぎ追加されている。デジタル化に注力している企業の場合は、リビルドによってこれらの機能をすぐに利用できる基幹系システムを構築することが重要になる。

 ハードウエアやミドルウエアのサポート切れなどの理由でプロジェクト期間が決まっていたり、ERPの刷新を急いだりする場合は、プロジェクト期間が短くて済むコンバージョンを選ぶほうが、確実にプロジェクトを遂行できる。

 例えばニチレイがリビルド方式を選んだのは、「複雑になり過ぎた基幹系をシンプル化するためには、従来の状態を引きずっての移行では実現できない」と思ったためだ(表1)。

表1●塩漬けだったERPを刷新した企業の例
*導入当時の製品名は「R/3」
[画像のクリックで拡大表示]

 一方、コンバージョン方式で基幹系システムを刷新している専門商社の旭日産業は、「移行による現場への負担を減らすことを優先して、コンバージョン方式を選んだ」と児玉幹一郎取締役情報システム部長兼経営企画室副室長は話す。同社は2019年8月の稼働に向け、2001年に導入したSAP ERP(導入当時は「R/3」)からS/4HANAへの移行プロジェクトの途中だ(図1)。

図1●塩漬けERPからの脱出方針を決めるためのチェックポイント
Qに対してより自社の状態に近い回答を選び、●と▲の合計から自社に向く刷新方式を決める
[画像のクリックで拡大表示]

この先は有料会員の登録が必要です。「日経SYSTEMS」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら