ERPパッケージを利用した基幹系システムの構築は当たり前になった。2000年前後にERPがブームとなり、多くの企業が基幹系システムの構築に利用した。それから20年。今、導入時のまま「塩漬け」になったERPが問題になっている。

 「やっと長年の課題を解決できた」。ニチレイの小松唯史経営企画部副部長(情報企画担当)は、2018年5月に刷新した新基幹系システムについてこう振り返る。新基幹系システムは欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージ「S/4HANA」を使って構築。会計、販売、購買などの業務をカバーする。

 ニチレイがSAPのERPを導入するのは初めてではない。2001年にSAPのERPパッケージ「R/3(現在の製品名はSAP ERP)」を利用して基幹系システムを構築した。ところが2000本のアドオン(追加開発)ソフトを利用した結果、「複雑になり過ぎて、ERPを少し変更するだけでも手間がかかる」(小松副部長)基幹系システムになってしまった。

 ERP本体に新機能を追加するのが難しいため周辺システムを開発した。その結果、基幹系システムの複雑さは増していった。

 「もっと柔軟に新機能を追加できるようにしたい」。小松副部長はこう思っていた。「ERPの価値は、バージョンアップによって自社では開発できない新機能を利用できること。それができないのでは意味がない」(小松副部長)からだ。

 しかし基幹系システムの刷新は難しかった。2007年にサポート切れなどを受けてERPをメジャーバージョンアップしたが、アドオンソフトやパラメーター設定、周辺システムは変更しなかった。

世界初の標準機能を採用

 システム刷新の契機が訪れたのは2015年度だった。東日本大震災を受けた災害対策強化の一環として、中期経営計画に基幹系システムの見直しを盛り込むことになった。小松副部長は、「複雑な基幹系システムを一新する絶好のチャンスと考えた」と振り返る。

 ニチレイは基幹系システムをシンプル化するため、SAP ERPの後継製品となるS/4HANAを使って再構築する方針を採った。SAP ERPからS/4HANAへ移行する際にはデータやパラメーター設定をそのまま移行する方法もあるが、課題解決のためにERPの新規導入による再構築を選んだ。

 複雑な基幹系システムの原因となったアドオンソフトもゼロベースで見直した。S/4HANAの標準機能の利用を優先し、53%のアドオンソフトを削減した。S/4HANAの標準機能には、世界で初めてニチレイが採用する機能もあった。

 それが「不定貫」と呼ぶ機能だ。不定貫は1箱の値段が重量で決まる商品を管理する機能だ。ニチレイにとっては重要な機能だった。SAP ERPに不定貫を実現する機能はなく、以前の基幹系システムでは規模の大きなアドオンソフトで不定貫の機能を実現していた。

 ニチレイは今後、バージョンアップによるERPの新機能の利用を積極的に進める方針だ。「AI(人工知能)を使った機能なども取り入れていきたい」と小松副部長は話す。

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