人生100年時代の到来と言われ、これまで以上に学びの必要性は高まっています。とはいえ「仕事が忙しく学ぶ時間など取れない」と思われている方も多いでしょう。本連載では忙しいエンジニアの方々が、効率良く仕事に生かせる学び方を取り上げていきます。

 第1回のテーマは学びのメカニズムです。メカニズムを知らないと、苦労の割には身に付かなかったという結果になりかねません。まずは学習の効果と効率を高める3つの視点を紹介します。

生物学的視点:短期記憶と長期記憶

 1つ目は生物学的視点です。人間がどのようにして情報を記憶しているか知る上で必要な視点になります。

 人の記憶には短期記憶と長期記憶という2種類があります。短期記憶は、情報の一時的な保管場所のようなものです。コンピューターに例えるとバッファに当たります。時間の経過や新たな情報が入ってくることで、すぐに消えてしまう記憶です。

 一方、脳が本格的に情報を記憶するときに使うのが長期記憶です。脳のハードディスクと考えてよいでしょう。ただ、容量は限られていますから、脳は情報を仕分けし、必要と判断したものを大脳皮質に送って長期に保存します。

 長期記憶に情報を残すには、脳に「この情報は重要なもの」と認識させることが必要になります。このためには既に持っている情報と新しい情報を組み合わせるのが有効です。

 例えば、電話番号を語呂合わせで覚えることがありますが、これは既に覚えている情報と番号を結合しているわけです。このように、新しく学習した内容を自分の仕事やこれまでやってきたことと関連付けると、理解を深め、長期に記憶できるようになります。

段階的視点:段階的に質が高まる

 2つ目は段階的視点です。学びは段階を経て深まります。これをモデル化したものがASAPモデルです(図1)。ASAPはAcquire(覚える)、Structure(構造化する)、Attempt(試行する)、Perform(達成する)の頭文字を取ったものです。

図1●学びの質を4段階で示した「ASAPモデル」
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 第1段階のAcquireでは、短期記憶から長期記憶に情報を転送するために複数の感覚を使ったり、経験したりします。第2段階のStructureでは、自分の中で情報を体系的に整理したり、人に話せるようなストーリーや比喩を考えたりします。

 第3段階のAttemptでは、獲得した知識を実際の仕事で実践し、その結果を基に知識を見直したり評価したりします。第4段階のPerformでは、本質を理解して応用したり、新しいことを発見したりします。

 各段階を経ることで、学びの質が高まっていきます。どれかの段階が完了できないと次の段階での学びを成功させる可能性は低くなります。

 多くの方々を指導してきた経験から言うと、学びを自分の仕事で生かせていない人は、自分の中で知識を構造化できていない場合がほとんどです。要するに、単に知識を覚えただけなのです。知っていること、理解していること、知識を生かせるようになることの間には大きな差があります。自分の学びが今どの段階にあるのか、ASAPモデルで考えてみましょう。

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