マネジメント自体に起因するロスコストは巨額となり打撃が大きい。プロジェクトマネジャー不在となれば、顧客との信頼関係も失われる。プロマネの兼務や交代によるロスコストの連鎖を防ぐ取り組みが不可欠だ。

 最終回はマネジメントに起因するロスコストを取り上げます。プロジェクトマネジャー(プロマネ)はプロジェクトの責任者です。設計者の行動によって引き起こされたロスコストであっても、最終責任あるいは説明責任はプロマネにあります。一方で、プロマネもしくはその上長の行動や判断が直接ロスコストにつながる場合もあります。今回はそうしたアンチパターンを取り上げます。

パターン1:プロジェクトマネジャー不在

 最初のアンチパターンPM001を図1に示しました。タイトルは、「プロジェクトマネジャー不在×意思決定できず→懸案事項への対応工数増」です。ロスコストに至る経緯は、以下のような流れです。

図1●プロジェクトマネジャーの不在
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経緯

 プロジェクト開始時にプロマネをアサインできず、数カ月間プロマネ不在でプロジェクトが進んだ。この間、顧客からの要望に対して実施可否や優先度の判断ができないばかりか、重要事項が懸案事項としても管理されず、放置されている状態になった。さらに、一部のメンバーはプロマネに相談できないことから、顧客からの無理な仕様追加の約束を受け入れていた。

 プロマネがアサインされたときには、顧客との信頼関係が失われていたために、その後も懸案事項の解決は難航し対応工数が増加した。1件1件の解決に時間を要したため納期も遅延し、ロスコストは拡大した。

 プロマネが不在になるというパターンは、次のようなケースで起こり得ます。

 ケース1:現在A氏が担当しているXプロジェクトは6月に終了予定なので、10月からスタートするYプロジェクトのプロマネにA氏を割り当てることが決まっていた。5月になってXプロジェクトの納期が9月末に変更されたが、ぎりぎり間に合うという判断からA氏がYプロジェクトを担当するという計画を変更しなかった。Xプロジェクトのシステムは10月に稼働したが、品質が安定せず、A氏は離れられない状態になった。間際の変更となったため、A氏に代わるプロマネをYプロジェクトにアサインできなかった。

 ケース2:A氏は、XプロジェクトとYプロジェクトのプロマネを兼務していた。ところがXプロジェクトが混乱し始め、Yプロジェクトに割ける時間は徐々に少なくなっていった。Xプロジェクトの混乱は深刻さを増し、Yプロジェクトはプロマネ不在の状態になった。

 プロマネの不在は隠しきれるものではありません。定例会議への欠席が続いたり、大事な会議に欠席したりするなどの現象として表れてきます。顧客にとっては大事なプロジェクトなのにプロマネと連絡が取れない、担当者と話しても要領を得ない、あるいはプロマネの上長と話してもらちがあかないなど、誠意ある対応が感じられないことが続くと、どうしても感情的になってきます。

 そうなるとプロマネが復帰した後も、顧客が本音では重要ではないと思っていることさえも譲らず、助け舟も出さないという状況が続き、仕様の追加や変更が増える事態となったりします。懸案事項の解決にも1件1件時間がかかります。懸案事項の解決が難航すると、工程が遅延しているのに担当者の作業に待ちができたり、見込みで対応して手戻りが発生したりするなど、様々な問題が付随して起こります。顧客との信頼関係が損なわれていますから雰囲気も悪くなり、さらに悪い方向に進んでいきます。

対応策

 この現象を止められるのは誰でしょうか。対応策としては、プロマネの仕事を調整したり、プロマネを支援できる人材を投入したりすることなどが考えられますが、プロマネ自らが解決に動くのは無理があります。

 先の2つのケースで言えば、別のプロジェクトの混乱が収束しないうちは、もう1つのプロジェクトを積極的に担うという意識をなかなか持てません。ケース2のような場合だと、トラブル対応は一時的と思っているために、別のプロマネをアサインする時機を逸することもあります。こうした状況でカギを握るのは、プロマネを任命している上長です。PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)など第三者の役割も大切ですが、PMOにできるのは、プロマネが不在になっているというアラームを上げるところまでです。実際の対策は、上長しか打てないのです。

 長引きそうなら、顧客に説明して対応策を協議しなければなりません。場合によっては、納期を交渉することになるかもしれません。上長が組織内での人脈や権限を使って解決にあたるのは当然ですが、人の手当てがつくまでの短期間であれば、自身がサブリーダーと協力してプロマネを代行することも考えないといけません。

 本来ならこのような状態になる前、つまりプロマネの人選時に手を打つ必要があります。優秀なプロマネでもリスクの高いプロジェクトを複数担当すると、プロマネ不在の問題が起きやすくなります。プロマネの兼務については、一定の目安やルールを設けておくべきです。ただし、優秀なプロマネの数には限りがありますので、目安やルールを決めただけでは効果がありません。やむを得ず兼務する場合は、内部の報告体制やPMOによる監視体制を強めて有事に備えます。

 プロマネ不在で顧客との信頼関係を喪失してしまった場合、信頼回復に向けどんな対応策があるでしょうか。アンチパターン上は「?」としました。誠心誠意対応して信頼を回復する以外に策はないのですが、どうやって好転させるかはケースバイケースですので「?」です。上長だけでなく、経営幹部や営業部門などの助けを借りることも考えなければなりません。

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