旧態依然とした開発現場では、現場の働き方改革はなかなか進まない。働き方改革の実現には、勤務時間を制限する強制力と労働生産性の向上が必要である。アジャイル開発のプラクティスを参考に働き方改革につながる手法を紹介する。

今回のポイント
  • 労働時間を減らしても成果が落ちないように労働生産性を向上する。
  • ユーザー企業とSIベンダーの両者が働き方改革への共通認識を持つ。
  • 働き方改革につなげるために「優先度付けしたプロダクトバックログ」「カンバン」「少人数チーム」「デイリー・スタンドアップ・ミーティング」「レトロスペクティブ」「全員同席」というプラクティスを利用できる。

 本連載は、ウォーターフォール型の開発プロセスにアジャイル開発のプラクティスを部分的に組み込み、プロジェクトに潜む様々なムダを排除する「ハイブリッドアジャイル」を提案している。今回は、働き方改革につながるプラクティスについて解説する。

労働時間の削減だけでは済まされない

 「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「仕事と育児や介護の両立といった働く人のニーズの多様化」などを背景に、現在多くの企業が働き方改革に取り組んでいる。従業員が個々の事情に応じて多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く人がより良い将来の展望を描ける環境を整備しようとしているわけだ。

 働き方改革を進めているIT企業は「業務のムダを取り除く」「自律型チームを作る」「多様なニーズに対応する」といった取り組みをしていることが多い。これらはいずれも、働き方改革の実現につながる(図1)。

図1●企業の働き方改革への取り組み
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 業務のムダを取り除くことは、労働時間の短縮につながる。従業員が業務以外の時間を確保できるようになり、育児や介護に時間を割けるようになる。自律型チームを作れば、メンバーが自主的に物事を決められるようになり、責任感を持って業務に取り組めるようになる。その結果、モチベーションの向上が見込め、働きがいのある職場になる可能性が高まる。また、働く人の多様なニーズに対応した職場環境は、在宅勤務などの柔軟な働き方を可能にするだろう。

 しかし、働き方改革を推進することは、企業にとってそう簡単な話ではない。働き方改革と聞くと、すぐに労働時間を短縮するといった結論になりがちである。ところが、労働時間の短縮で、これまでと同じ成果が達成できないようでは本末転倒だ。労働時間を減らしても生産量はこれまで以上とする生産性向上も重要になる。このように、働き方改革の推進には、「労働時間の制限」と「生産性向上」の両輪で進めていかなければならないのだ。

 そこで、アジャイル開発のプラクティスを活用したい。筆者は、アジャイル開発の考え方と働き方改革の実現には共通部分が多くあると感じている。例えば、アジャイル開発のプラクティスにはムダ取りの手法がある。ムダな作業を減らすことができれば、労働時間を短縮でき、生産性も向上する。これらは働き方改革につながるだろう。

 また、アジャイル開発は自律した開発チーム(自律型チーム)を重視する。自律型チームはメンバーのモチベーション向上を促進し、生産性向上にもつながるはずである(図2)。

図2●アジャイルは働き方改革につながる
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