品質を確保するには、品質計画のPDCAサイクルを上流工程から回す必要がある。品質計画で決めておくべきは、実績と対比するための品質評価のプロセスだ。計画した評価プロセスはあらかじめ関係者間で合意しておく。

Before
品質計画って、何をすればいいんだろう?

 またしてもあの柳川グループ長が、変なことを言い出した。真面目そのものの顔で疑問を投げてきたのだ。

「ねえ、田村さん、品質会議ってやらないの?」

 もっとも、プロジェクトマネジャー(PM)の田村玲奈は最近、グループ長の発言にいちいち驚いたりしない。過去にいくつも前例があるからだ。

 プロジェクト計画を立てれば、「どこで失敗すると思う?」と聞いてくるし、変更管理に至っては、「変更か不具合かなんてどうでもいい」と暴言を吐く始末。柳川グループ長の放言癖には慣れていた。最初はとんでもない言い分に聞こえたとしても、よくよく真意をくんで検討してみれば、グループ長のスタンスは奇妙に現実的なのだ。

 だから今回、玲奈は落ち着いて問い返した。

「品質会議、ですか。あまり聞いたことのない言葉ですね。どういうことでしょう?」

 プリントアウトした進捗報告書を丸めて筒にしながら、グループ長は言った。

「どんなプロジェクトでも、進捗会議って開催するだろう?あなたのプロジェクトもそうだ。だから、毎週こうして進捗報告書をチェックしなくちゃならない。面倒臭いけどね。でも、品質会議って開催しているプロジェクトは聞いたことがない。どうしてかな」

 玲奈は思い出した。そういえば、進捗報告書の書式を改訂するときも、柳川さんは似たようなことを言っていた。

 柳川グループ長は、紙の筒を望遠鏡に見立てて目に当て、ぐるりと筒先を回す。

「見えるのか?そんなことで品質が見えるのかな」

「ちょっと柳川さん。ふざけすぎですよ」

 玲奈は、筒先を手のひらで押しやった。

「だから進捗報告書にQCDRを共有する欄を追加したんじゃないですか」

 柳川は、丸めていた進捗報告書を広げた。

「その通りだよ。でもね、最近この欄がつまらなくなっている。いつ見ても問題なしとしか書いてない」

 玲奈はようやく理解した。そこを気にしていたのね。

 前任のグループ長と違って、柳川さんは、「問題なし」という言葉が嫌いだ。プロジェクトである以上、問題が出ないわけがないと信じているし、ライン長の仕事は問題解決支援だと思っている。だから、問題がないと言われると、子供のようにすねてしまうのだ。

「でも、品質問題がないんだから、仕方ないじゃないですか。指標は別紙に切り出してますし」

「そこ!」

 柳川は、本人にしかわからない何かを指差した。

「そこだよ、そこ。指標なんかじゃ、品質は評価できない。そう思わない?」

 やれやれ、始まった。そう、玲奈は思った。放言をしておいて、同意を求める。つまり彼はまた、玲奈のために課題を設定しようとしている…。

 玲奈は腹をくくった。いいでしょう。受けて立とうじゃないの。で、今度は何を改善させようって言うの?

「品質計画だ」

 と、柳川グループ長は独り言のように言った。

「次工程の詳細設計と実装では、品質計画を明確にして、週ごとに品質を評価しよう」

 決して反論はするまいと思っていた玲奈だが、思わず言葉を返してしまった。

「はあ?でも、詳細設計/実装工程では、お客様に品質を報告することになっていませんよ」

「だからいいんじゃない。自分たちで完結する作業だからこそ、好きなように管理できるだろう?報告の必要もないし、要望も出ない。理想的だよ」

「でも…」

 玲奈は口ごもった。品質計画って、一体何を計画すればいいんだろう(図1)。

図1●品質計画とは?
[画像のクリックで拡大表示]

 改訂後の進捗報告書式を運用して満足していた玲奈さん。柳川さんからの新たな要求を前に困惑していますね。どうすればいいか、考えてみましょう。

 柳川グループ長が指摘しているように、多くのプロジェクトで「進捗会議」は実施されていますが、「品質会議」というのはあまり耳にしません。

 品質について共有せず、進捗ばかり気にしていると、結果的に品質にしわ寄せがきてよろしくない。そういう認識のもと、玲奈さんは進捗会議の中で品質評価を共有すべく、進捗報告書に「QCDR(品質、コスト、納期、リスク)欄」を新設しました(2018年6月号を参照)。会議ばかり増やしてもいいことはありませんから、これは現実的で良いアイディアだと思います。

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