企業システムにおいて、AIはどのような分野に適用されているのだろうか。何ができれば「AI人材」になれるのだろうか。話題のAIだが、企業システムでの活用はまだ見えにくい。AI初心者のITエンジニアが持つ疑問をQ&A形式で徹底的に解説する。

Q AI人材に求められる能力は?

A 最も大切なのは「AIで何ができるか」を見極められる知識と能力。

 「AI人材が不足している」とよく言われる。ではAI人材とは、どのような人材なのだろうか。

 多くのAIシステム関係者が、AI人材の1つの条件として挙げるのが、「ユーザーから要件を聞き、AIで実現できるのか。実現できるならば、どのようなアルゴリズムで実現できる可能性があるのかを判断できること」だ。

AI人材に求められるスキル
要件定義や既存システムとの連携機能の開発など、既存の業務システム構築のスキルが必要になる
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 「AIで不良品を検知したい」「AIを使ってコールセンターの応対を効率化したい」など、ユーザーからの要求は、AIのどういった機能を利用したいかといった技術まで詳細化されていないケースが多い。こうした要求に対して、「不良品検知ならば画像処理が利用できるはず。画像処理のアルゴリズムで、不良品検知に利用できるものならば有力なものは3つある」といったことがすぐに思い浮かぶスキルが今、AI人材に求められている。

 「要件定義や業務分析のスキル、知識はこれまでの蓄積が十分に生きる」と富士通の橋本統括部長は話す。企業システム構築の要件定義で実施する業務分析などの知識や経験に加えて、AIに関連するアルゴリズムの知識などを習得すれば提案が可能になるからだ。

 富士通はAI人材を幅広く位置づけている。データサイエンティストのような統計学の専門家やPythonなどを使いこなすような人材だけでなく、既存の企業システム構築に携わっていたITエンジニアも「AI人材」と位置づけている。その理由は、「AIシステムの構築といっても、既存の企業システム構築の知識が幅広く生きるからだ」(橋本統括部長)。

最先端分野は外部の力を借りる

 実際の案件で「AIを使いたい」と言ってもAIが向かないケースがある。こうした「AIが向くかどうか」の見極めにも従来の経験が生きる。住友電工情報システムでは、「機械学習だけでなく、ルールベースのアルゴリズムもAIとして、効果が高いものを使い分けるようにしている」と武並佳則ビジネスソリューション事業本部AI技術推進室長は話す。if~thenなどで設定した条件に応じて分類するルールベースのアルゴリズムは、1980年代の第2次AIブームのときに頻繁に利用された方法だ。

 住友電工情報システムは文書検索システムを開発した際に、「公開できない文書を外す」という機能を組み込んだ。文書検索システムなので、機械学習を使った自然言語処理を実装すれば機能は実現可能だ。しかし全ての文書を検索する以前に、機密や極秘、社外秘といった文字があれば「公開できない文書である」と分かると考え、ルールベースのアルゴリズムを適用した。AIを利用するには、高度なアルゴリズムや統計学に関する知識だけでなく、「システム全体の効率化の視点から最適なアルゴリズムや技術を選ぶことが求められている」と武並室長は話す。

 従来の経験が生きる分野がある一方で、最先端の分野である機械学習や深層学習のアルゴリズムに関する研究もAIシステムを構築するうえでは欠かせない。しかし最先端の分野を研究するAI人材を1社で抱えるのは、人材獲得の面からも経営の面からも効率的ではない。そこで住友電工情報システムでは最先端の研究は、「大学の研究室などと一緒に進める体制を採っている」(武並室長)。

 AI人材は不足すると言われているが、これまでの企業システム構築の経験知識が十分に生きる分野だ。

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