企業システムにおいて、AIはどのような分野に適用されているのだろうか。何ができれば「AI人材」になれるのだろうか。話題のAIだが、企業システムでの活用はまだ見えにくい。AI初心者のITエンジニアが持つ疑問をQ&A形式で徹底的に解説する。

Q.Pythonや統計学を駆使しないと、AIシステムは開発できない?

A.サービスやライブラリーの充実の結果、専門知識がなくても開発できるようになりつつある。

 プログラミング言語の「Python」を使えて、統計解析の知識がなければ、AIシステムの中核とも言えるモデルの開発ができないのではないか。こう思っているITエンジニアは多いのではないだろうか。

 「最近はAIのコアであるモデルの開発を支援するためのツールが充実しており、Pythonなどを使ってスクラッチで開発するケースは少なくなっている」。システムインテグレータの梅田社長はこう指摘する。

 AIの開発に必要な機能をまとめたライブラリーや、学習データを既に読み込ませてすぐに利用可能にした学習済みのAIサービスなどが続々と登場している。

 「画像認識を利用して、入退室管理をしたい」といったプロジェクトが」あった場合、画像認識のモデルをスクラッチで開発するよりも、画像認識に強いライブラリーや、学習済みのクラウドサービスを利用することが多い。

 米グーグル(Google)の「CloudVision API」や、米マイクロソフト(Microsoft)の「Computer Vision」といった学習済みのクラウドサービスを利用する場合は、パラメーター設定や学習データとなる画像のアップロードなどの作業で、画像認識モデルを構築できる。「TensorFlow」のような画像認識に適用できるライブラリーを使う場合は、Pythonなどを利用しながら学習回数などのパラメーターを設定していく。

Q.ライブラリーや学習済みのAIサービス。どのような違いがあるの?

A.学習済みAIサービスの場合、学習データがポイントに。日本語処理の得意不得意も確認。

 AIシステムを構築するためのライブラリーや学習済みAIサービスは数え切れないほどある。自分が実際にプロジェクトを手掛ける際に、どのようなポイントで選べばよいのだろうか。

 ライブラリーの場合、深層学習が得意か機械学習が得意か、Pythonで開発するのかそれ以外の言語で開発可能かなどが明確に分かれている。

 今、最も利用されているTensorFlowはグーグルが開発してOSS(オープンソースソフトウエア)になった深層学習向けのライブラリーだ。「Chainer」は日本の企業であるPreferred Networksが開発したOSSの深層学習向けライブラリーだ。日本語の文献が多く、日本のITエンジニアには利用しやすいと言われている。「Neural Network Libraries」もソニーが開発した日本発のOSSの深層学習用ライブラリーである。

図5●システム開発に利用しているAI関連のライブラリー(トップ10)
日経BP社 日経BP総研「AI(人工知能)関連スキルに関する調査」より
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 学習済みAIサービスの場合、得意不得意は提供企業の戦略や学習データによって左右される。IBMのWatsonの学習済みAPIは画像処理や自然言語処理、音声処理などの単機能の学習済みAIサービスを提供している。

 これらサービスの中で、「言語処理や音声など言語に依存するものは、米本社で日本語の開発の優先順位が高い」と日本IBMの田中部長は話す。日本語の言語処理の機能の開発は、日本にあるIBM東京基礎研究所も担っており「日本市場への浸透を狙って、意図的に日本語処理の能力を高めている」と田中部長は話す。

 ではライブラリーと学習済みAIサービスは、どのように使い分ければいいのだろうか。

 IBM Watsonで画像を認識する場合、「画像を判別する際は学習済みのAIサービスで実現できるが、画像に写っているものを特定する際は、学習済みのAIサービスでは実現できない」(田中部長)。

 例えば「Watson Visual Recognition」を利用して、犬と猫の画像を判別するためには、犬と猫のデータにラベルを付けて学習させることで画像を利用した犬と猫の判別が可能になる。一方で「写真に写っているものが何か」という物体を特定する機能はライブラリーやツールを利用して開発する必要がある。

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