より良いUX(ユーザーエクスペリエンス)に欠かせないのが、ユーザーの目線に立つことだ。観察や調査、チェックツールを使った自己診断など、ユーザーの立場に立てる方法は様々ある。個人での資格取得や組織としての人材育成など、UXの向上に向けて取り組みを続けよう。

 本連載はこれまで、ユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインするためのフェーズを示した「JJGの5階層モデル」に沿って、ITエンジニアのみなさんがデザインに取り組むためのステップを解説してきました(図1)。JJGの5階層モデルの下のフェーズから順に取り組んだ結果を積み上げていくことで、ユーザーが利用するインターフェースや機能がユーザーをもてなす入り口として、戦略にのっとってデザインされていく流れをイメージしていただけたのではないでしょうか。

図1●これまでのまとめ
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 ITエンジニアのみなさんが、戦略から表層までのすべてのフェーズに携わることができれば、これまで紹介してきた内容に沿ってUXに配慮したデザインを実践できますが、現実は必ずしもそうはいきません。プロジェクトの一部のフェーズのみを担当したり、プロジェクトに途中から参画したりといったことが頻繁にあります。またプロジェクトで実施する事項が決まっている場合、より良いUXのためにユーザー調査やプロトタイプ制作を行いたいと思っていてもプロジェクトリーダーに働きかけることが難しいと感じるケースもあるでしょう。

 そのような場合でも、より良いデザインを実現するためにITエンジニアができることがあります。本連載の最終回となる今回は、ITエンジニアが「やってみよう」と思ったときに取り組めるUXをより良くするためのポイントを紹介していきたいと思います。

まずはユーザーを知るための活動をしよう

 ユーザーインターフェース(UI)があるシステムには、必ずユーザー(利用者)がいます。みなさんが携わっているシステムのユーザーは、どんな人か知っていますか。あるいは自分が開発に携わっているシステムがどこでどのように使われているのか、実際に見たことがありますか。

 ユーザーにとってシステムは、何らかのサービスやビジネスを実現する際に利用する道具の1つです。システムを使うこと自体は目的ではありません。そこで重要になるのが、ユーザーは自然にシステムを使っているか、ユーザーがサービスや業務で実施したいことを実現できているか、そしてやりたいことを阻害していないかという点です。それを知るために有用なのが「現場を知る」活動です。

 現場を知る一番の方法は、現場に直接出向くことです。自分が携わっているシステムを利用しているサービスやビジネスの現場に行けるようであれば、まず行ってみましょう。

 システムを導入している顧客に許可がもらえるのであれば、現場でユーザーがシステムを利用している様子を観察する手法である「エスノグラフィー」がお勧めです。直接、観察することが難しい場合でも、一般向けのサービスの一部としてシステムが利用されているのであれば、ユーザーの立場で自らがサービスを体験してみる「サービスサファリ」という方法もあります。エスノグラフィーやサービスサファリを実施するメリットは、システムに関する気付きはもちろん、サービスやビジネス全体に関する気付きも得ることができる点にあります。

エスノグラフィー

 ユーザーの行動を観察することで示唆を得るユーザー調査方法がエスノグラフィーです。サービスやビジネスを実行する際に、「ユーザーがどのように行動しているのか」「ユーザーが行う作業の流れの中で、システムやその他のタッチポイントがどのように使われているか」を確認します。

 タッチポイントにはスマートフォンやパソコンのようなシステムのUIとなる機器だけでなく、レジや計算機、メモやマニュアル、そして部屋など、観察の対象となる行為の中でユーザーが使用する全てのモノや資料、環境を含みます。エスノグラフィーは観察することでユーザーの行動を理解し、その行動を阻害したり、UXを悪化させたりしている要因を見つけ出すために利用します(写真1)。

写真1●エスノグラフィーの様子
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