RPAの導入は大きく5つのステップのプロセスで進める。最初にすべきは「全体計画策定」だ。導入目的や展開計画、推進体制など主要9項目を明確に定めよう。こうすることで、ありがちな失敗パターンの1つである「場当たり的に始める」ことを避けることが可能になる。

 前回はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入の失敗の原因となる典型的な5つのパターンを紹介しました。今回は失敗パターンの1つである「場当たり的に始める」ことについて、失敗の事例とそうならないための対策を説明します。

効率化したのに別の業務でのんびり作業

 ある企業では、経営トップの号令のもと、トップダウンでRPAの導入を進めました。この会社では、情報システム部門の中に新たに作った「RPA推進チーム」が導入プロジェクトを推進しました。ソフトウエアロボットの作成については、事業部門ごとにアサインされたスタッフが担うことになりました。事業部門のスタッフはロボットの作成経験はありませんでしたが、RPA推進チームが教育し、何とかロボットを作れるようになりました。そして、導入検討開始から1年後までに、会社全体で50体以上のロボットが作成され、実際に稼働し始めました。

 導入後に推進チームのリーダーが現場を回ったところ、ほとんどの現場担当者は、手間のかかっていた単純作業から解放され、とても満足していました。口々に「RPAを入れてよかった」と言い、推進リーダーは感謝されました。

 ここまで読むと、「これは失敗事例でなく、成功事例ではないか」と思うかもしれません。しかし、問題はこの後に判明しました。ある現場部門ではRPAを導入した業務Aの時間が30%も短縮したにもかかわらず、別の業務Bをそれまで以上にのんびりとやりながら、時間をつぶしていたのです(図1)。

図1●RPAの導入前に目指した姿と導入後の現実が食い違った例
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 RPA推進チームのリーダーは唖然として言葉を失いました。これではRPAを導入した意味がありません。問題は、RPAのロボットでなく現場で働く人の意識にあったのです。

 このような結果になってしまった主な原因はRPA推進チームにあります。この現場スタッフは責められません。推進チームが現場部門に根本的なメッセージを伝えていませんでした。それは、経営トップから言われていたRPAを導入する目的です。

 RPA推進チームは、経営トップからRPA導入によって業務の効率化を図り、その結果として売り上げ拡大を図るように指示されていました。具体的には、あまり付加価値を生まない業務の一部にRPAを導入し、それによって生み出した時間を付加価値の高い「価値創造業務」に当てる目論見だったのです。しかし、この狙いは、少なくとも現場部門には伝わっていませんでした。

 要するに、RPA推進チームは業務現場にRPAを導入するという「手段」にばかり気を取られ、肝心の価値創造業務の時間を増やして売上拡大につなげるという目的を置き去りにしてしまったわけです。

 このような事態は、会社方針でとにかくRPAを導入しようと、手段先行でプロジェクトを始めてしまったときに起こりがちです。RPA導入の初期段階に最も重要なことは、何のためにRPAを導入するのかというゴールを明確にすること。そしてそれを関係者全員が共有することです。

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