PC業務を自動化するという触れ込みで一気に導入が広がったRPA。その一方で、導入に失敗するケースも散見される。先人と同じ過ちを繰り返さないために、失敗のパターンを押さえよう。典型例は、RPAの特性を理解せずに他の業務システムと同じように導入しようとすることだ。

 日本では2017年、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に関心を示す企業が急激に増え始め、さらに2018年に入ると、そのスピードは一段と加速しました。振り返ると、2017~2018年はRPAブームだったといえます。

 最初にRPAの活用が広まったのは、メガバンクを中心とした大手金融機関でした。RPAは定型化されたルーチンワークを確実に実施できるため、金融機関のバックオフィス業務と非常に相性が良かったためです。その後、RPAが世間に認知されるに従って徐々に導入企業が増えました。現在では様々な業種の企業、公的機関などでも導入が進んでいます。

 日本でRPAへの関心が急激に高まった背景には、労働生産性の向上や長時間労働の削減、業務のデジタル化推進といった、多くの企業が共通に抱える課題があります。これらの課題に対して、RPAが有望な解決策になると期待されました。これまでシステム化の対象外だったPCを使うホワイトカラーの業務が、簡単に素早く低コストで自動化できると、プラス面が誇張されて宣伝されたためです。その結果、RPAの導入を検討する企業が一気に増えました。

 ただ、今となっては当時の期待は過大だったと言わざるを得ません。RPAの導入を成功させることは、それほど甘くないと感じている企業も少なからずあります。多くの企業がこの1~2年でRPAの導入に取り組んだ結果、成功だけではなく失敗したケースも見聞きするようになりました。RPA導入のプロジェクトを開始した後に、苦労するケースは意外に多いのです。以下で、一例を紹介しましょう。

一気にRPA化しようとして失敗

 ある企業では、RPAの導入に1年以上かかってしまいました。簡単に素早く導入できることがRPAのメリットと言われているのにもかかわらず、です。

 この企業では、システム部門が主導して現場担当者の一連のPC関連業務をRPAに置き換えようとしました。この業務には、Excelによるデータ集計、業務システムへのデータ入力、CSVファイルの出力など、複数の作業が含まれていました。

 一連のPC関連業務の中で、現場担当者の作業負荷が最も高かったのは、Excelに集計データを手作業で入力すること。この部分だけでもRPAで自動化できれば大幅な生産性向上が見込めたはずでした。しかし実際は1年以上かかってしまったのです。

 RPA導入が長期化した原因は大きく2つありました(図1)。原因の1つ目は、導入を主幹したシステム部門が一連の業務プロセス全体を一気に自動化しようとしたことです。従来のシステム開発の要件定義に当たる「業務の洗い出し」を全業務プロセスで実施し、その後のフェーズで開発と実装を手掛けました。いわば、従来のシステム開発の進め方を踏襲した格好です。

図1●RPAの導入に失敗した例
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 実はRPAではこのやり方は不向きです。RPAの導入では、細かい作業内容を正確に把握する必要があるためです。この企業では、現場に作業マニュアルがなかったり、マニュアルがあっても実際は担当者ごとにやり方が異なっていたりしていました。このため、業務プロセスの把握だけで膨大な時間を要してしまったのです。

 本来は、RPAの特徴である簡単で素早く実装できるというメリットを生かすべきでした。最初は、一番負荷の高い業務だけを対象にし、その部分だけ稼働し始めればよかったのです。手早くRPAを使い始めれば、それだけ導入効果を早く享受できます。

 結局、この企業のシステム部門はRPAの向き不向きを理解していなかったため、早期に作業を自動化してほしかった現場の期待を裏切る結果となってしまいました。

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