成長のため目指すべきゴールを設定しても部下は「やらされ感」を持つ。上司の一方的な提案であり、具体的に何をすればよいのかが見えないからだ。大切なのはゴール設定の際、目的と目標を明確にして互いに「握る」ことだ。

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 前回、人材育成コンサルタントの妻夫木から部下育成モデルの説明を受けた土屋は、さっそく不知火君に時間をとってもらって、不知火君に対する期待やゴール設定について話をした(図1)。しかしうまくいっていないようだ。まずは不知火君から見たストーリーを見てみよう。

図1●部下育成モデル
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不知火君のストーリー

 ある日、先輩で上司の土屋さんから呼び出された。土屋さんの話は「顧客であるスイセー社のシステム運用の大幅改良でリーダーとして活躍してほしい」ということだった。そのうえで「6カ月後に始まる運用大幅改良プロジェクトのリーダーになることをゴールとして、毎週振り返りを行いたい」という説明を受けた。

 話を聞いたときは「ついに来たか」という気持ちだった。自分がリーダーとして活躍しなければならないことはわかっている。しかし、一から作り上げていくのが好きな性分なので、システム開発の上流工程から関わりたい。誰かが作ったものを手直しするというのはあまり気乗りしない。だからといって、断るわけにもいかず引き受けざるを得なかった。

 それより苦痛だったのが、土屋さんとの振り返りの時間だった。

 週1回の振り返りの時間に、毎回「どうだった?うまくいったところといかなかったところは?」などと質問される。しかし、日々仕事をこなしている中で、何をどう答えればよいのかがわからなかった。仕方なく「今週は頑張りました」とお茶を濁しているのが実情なのだ。

 どうやったらゴールを達成できるのかもよくわからない。先輩の育成ごっこに付き合わされているようにも感じる。

土屋君の混乱

「妻夫木さん、ゴール設定というのが何だかよくわからなくなってきましたよ」

 状況報告のため1カ月ぶりに妻夫木に会うなり、土屋は自分の疑問を投げ掛けた。

「あれから不知火君に部下育成モデルの話をして、『半年後に始まる運用大幅改良のリーダーになる』というゴールを設定したのです」

「なるほど、それで何がわからなくなったのですか」

「今のところ、週1回振り返りの場を設定して進捗状況を確認しているのですが、ゴールがざっくりしすぎているためか、ゴールに向けて進んでいるのかどうかもよくわからないんですよね。結局、『今週は頑張りました』という答えしか出てこないんです」

「目的地は明確なんだけど、遠すぎるってことですかね」と土屋は独り言を言った。

「それは目的と目標に分けて考えたほうがよさそうですね」

 妻夫木はそう言いながら、目的と目標の違いを説明してくれた。

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