RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が普及するにつれて、メリットだけでなく、導入・運用上の様々なリスクが明らかになってきた。回避策を押さえておこう。

 ロボットの開発が完了し、稼働開始したら運用・保守フェーズに入る。運用・保守フェーズにおいてもガバナンスの強化や内部統制の整備・運用は必須だ。そこで実施すべき、(1)ロボット管理責任者と管理台帳の整備、(2)ログや変更情報の記録、(3)エラー・リカバリー手順の明確化、の3つのポイントを解説しよう。

ガバナンス強化に向けた具体策の全体像
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(1)ロボット管理責任者と管理台帳の整備

 導入したロボットの管理作業が属人化した状態だと、業務を正しく継続させる上でのリスクになる。そこで、人事異動などでRPAの導入に関わる担当者が異動するといった場合を想定し、属人化しない管理体制を構築しよう。ロボットの目的や稼働状況、作業の手順がブラックボックス化してしまうとロボットの保守や改修を正しく行えなくなる。

 ロボットのブラックボックス化を防ぐためには、開発から運用、破棄まで一貫して管理し、責任を持つ「ロボットオーナー」となる責任者を設けよう。人事異動があった場合でも組織として後任に引き継ぐことで、ブラックボックス化を防げる。

 責任者を置いた上で、全てのロボットとロボットオーナーを一覧化した台帳を整備するとよい。台帳には、ロボットオーナーの情報やロボットの稼働開始日の他、担っている業務や参照先としているシステム、関連ドキュメントの保管場所などを記録する。参照先システムを明示しておくことで、関連システムの改修が行われる際に、影響が出るロボットがあるかどうかをチェックできる。

 また関連ドキュメントとして、ロボットの適用対象となる業務の目的やそのプロセス、インプットやアウトプットなど業務に必要な情報を文書化しておくと、ロボットオーナーの引き継ぎの際に役立つ。

(2)ログや変更情報の記録

 運用段階に入ったら、ロボットの稼働状況をモニタリングしよう。ロボットが正しいタイミングで動いていること、正しく作業を完了できていることを、後から検証できる体制を作ることが重要だ。

 モニタリングするためには、「誰がいつ、どのロボットを実行したのか」「ロボットがどのような作業を行い、結果がどうなったのか」といったログを取得し、保管しておく必要がある。また変更履歴も同様に、ロボットの不適切な改修が行われていないかどうかをモニタリングするのに役立つ。実行ログや変更履歴が残る旨を周知することで、不正を起こしにくくするけん制作用も働く。

 注意が必要なのは、実行ログや変更履歴を記録したファイルの保管場所や、ログの中身の変更権限の設定だ。個人のデスクトップPCにログを保管すると、変更や削除を行いやすいため統制が正しく機能しているとは見なしにくい。ログのデータは個々のデスクトップPCではなく、サーバーに保管することが前提となる。この点も踏まえて、ログをサーバー側に保管でき、改修・変更の制限ができるRPAツールを使用することが望ましい。

(3)エラー・リカバリー手順の明確化

 RPAツールで開発するロボットはソフトウエアだ。急に停止することもあれば、不具合を起こすこともある。ロボットが停止した際を想定して、代替手段を確立しておかなければ、業務継続が困難になる。

 そこで重要になるのが、ロボットの停止時のリカバリー方法を事前に整備しておくことだ。特に決めておきたいのが、許容可能なダウンタイムが短い業務や、処理の複雑な業務だ。人手での作業を想定した手順を検討し、手順書やマニュアルを準備しておく必要がある。事前に任命されたロボットオーナーを起点にして、人手での業務に切り替えるなど、「だれが」「いつ」「どのように」リカバリーするか明確にする)。

ロボット停止時のリカバリー
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 ある企業では、納期の短い業務については、毎朝ロボットの処理が始まったことをメールで通知している。その通知が来ない場合はロボットが起動できていないと分かるため、即座に人手の作業に切り替えてリカバリーしている。

 全社展開を行う上では、これまで見てきた対応策の周知徹底に加えて、実行・継続するための組織づくりや役割分担の整理も重要だ。

 企業によっては、部門にとどまらずロボットの管理や運用を正しく行うための専任組織を設立している。ロボットの活用が増えるにつれ、専任の組織も増えていくだろう。

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