ITシステムの仕事で今、最も大切なことはスピード開発だ。継続的インテグレーション(CI)をはじめとした、プロセス改革が求められる。周囲から「トロい」と言わせないための極意を、最新事例から学ぼう。

 東京電力ホールディングスが、3年がかりでシステム開発の高速化に取り組んでいる。きっかけは2016年1月、原子力入構者管理システムの再構築だった。同システムは、原子力発電所(原発)の作業員が持つ線量計などと連携し、被曝量を管理するもの。1997年に稼働を始めたが、2011年の原発事故以降、その重要性は一気に高まった。

 震災後、同システムの開発は以下のように進められた。大きく5つのフェーズから成る(表1)。原発事故によって同システムは停止し、連携する設備も損壊した。それに伴い、緊急対策で新システムを開発。その後も法令対応や業務プロセスの変更による改修が続いている。

表1●原子力入構者管理システム開発のフェーズ
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 そんな中で始まったのが、フェーズ5の再構築プロジェクトだ。フェーズ1~3の開発は、事故に伴う緊急対応だったが、その後も仕様変更や機能追加は頻発。フェーズ5では、3つのシステムを統合するとともに、361の機能を実装する必要があった。

度重なる仕様変更に振り回される

 フェーズ4までの開発を振り返ると、度重なる仕様変更や機能追加、頻繁に発生する法改正に現場は振り回され、ユーザーの期待通りの納期にリリースできない場面もあった。「緊急事態なんだ!すぐに対応してくれ」「そう言われても、対応には時間がかかります」―。こんなやり取りを繰り返した(図1)。そのたびに経営陣からは、改善を強く求められたという。

図1●ユーザー要求に迅速に応えられない
〈イラスト:串田 千麻〉
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 「社会には『東電にはマネジメントができないんじゃないか』という雰囲気が漂っていた。原発の安全性に関わる原子力入構者管理システムにおいても、高速開発への変革がまさに至上命題だった」。同システムを担当する東京電力ホールディングスの菊池秀樹経理・資材システム企画グループ副長はこう振り返る。

 東電が掲げたのは「生産性倍増」。ウォーターフォールからアジャイルへ、もう“トロいIT現場” とは呼ばせない決意を固めた。

 とはいえ、フェーズ5の再構築プロジェクトは、それまで以上にスピードを求められた。柏崎刈羽・福島第二原発のCOBOLシステムをJavaに移植した上で、福島第一向けシステムと統合する。さらに過去のデータを移行しながら、361の機能を実装しなければならない。

 にもかかわらず、期間はわずか1年半、メンバーは40人しかいない。開発中でも引き続き仕様変更や機能追加が発生する可能性もある。プロジェクトマネジャーを務めたテプコシステムズの田中啓史発電設備システムグループ マネージャーも気を引き締めた。

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