本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

 米国西海岸の北部にある都市、シアトル。海に囲まれ、全米屈指の「暮らしやすい街」として知られるが、米Microsoft社や米Amazon.com社、米Boeing社など米国の巨大テクノロジー企業が近郊に拠点を置く都市でもある。

 このシアトルに2019年1月、GPUの雄であるあの米NVIDIA社が新しい研究所を開設した。

 その名も「Robotics Research Lab in Seattle(シアトルロボット研究所)」。専任研究員、客員研究員、インターンなど含めて50人近い体制で、ロボット分野の基礎研究を進める拠点だ。

 拠点内には家庭のキッチンを模した施設もあり、多様なロボットアームが移動台車の上で行き交い、オブジェクトを把持している。家庭向けに加えて、物流やヘルスケア、製造業など幅広い用途に向け、ロボットの基盤技術の構築を狙う。

中核は深層学習ではない

 NVIDIA社といえば、ディープラーニング(深層学習)技術だろう。ディープニューラルネット(DNN)のサーバー側での学習から、自動運転車やIoTなどエッジ環境でのDNN推論まで、今や同社のGPUチップは深層学習向けに引く手あまたの状況だ。

シアトルのロボット研究所にある移動マニピュレータロボット
今回の新技術を実装し、キッチン環境での把持操作などの研究に用いている。(写真:NVIDIA社)
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 そんなNVIDIA社が始めたロボット研究といえば、やはりディープラーニング技術関連なのではと思われるかもしれない。

 もちろん、対象物の検出や識別、さらには深層強化学習などロボット向けディープラーニング技術の研究も同社は積極的に手掛けているが、実はこのシアトルのロボット研究所のコアとなっているのは、ディープラーニング関連ではない。

 これまでロボット分野ではあまり注目されてこなかった異色の理論に、NVIDIA社は焦点を当て始めたのである。そして研究所開設から半年足らず、早くもその成果を出した。

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図1 動的で複雑な障害物がある環境でも高速に動作
ある理論を基にしてNVIDIA社が開発した動作生成技術の実演結果。引き出しや双腕同士のリアルタイムな干渉回避、把持対象物へ至る軌道など、アームの動作を各種の制約条件を踏まえながら包括的に生成できる。(写真:NVIDIA社)

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