次世代のキーワードといわれているIoT。このIoTを普及させる通信として注目されているのが、低消費電力で長距離通信が可能なLPWAだ(図1)。明確な定義はないが、1km以上の通信が可能な規格をLPWAと呼ぶことが多い。

図1●LPWAに分類される通信規格
低消費電力で広い通信エリアをカバーするLPWAは、免許が不要な920MHz帯を利用する規格と、免許が必要で携帯電話事業者が提供する規格の2種類に大別できる。
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 長距離通信が可能になると、IT化が進んでいなかった領域での活用が期待できる。例えば、無線LANやBluetoothでカバーするのが難しい水田や山あいからインターネットに接続できれば、農業や災害対策などにITを活用できる。

 IoTの市場を狙って、大手の携帯電話事業者も動き出した。全国に敷設済みのLTEネットワークを活用したLPWAサービスの提供に本格的に乗り出してきたのだ。本特集では、LPWAの最新状況と本命といわれるIoT向けLTEの仕組みを解説する。

先行するアンライセンス系LPWA

 LPWAは、免許を不要なアンライセンス系と、免許が必要なライセンス系に大きく分かれる。

 アンライセンス系はISM帯と呼ばれる電波を使う。規定内の出力や送信頻度なら自由に利用できるので、LPWAでいち早く使われ始めた(表1)。なかでも先行しているのがSigfoxとLoRaWANだ。

表1●電波免許不要の周波数帯を利用する主なLPWA
いち早く市場に登場したSigfoxとLoRaWANに加え、無線LANをLPWA向けに拡張したWi-Fi HaLowも注目される。
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 Sigfoxはフランスのシグフォックスが2009年にサービスを開始した。世界45カ国(2018年3月現在)において、各国のパートナー企業を通じてサービスを提供している。日本では京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が2017年2月から提供を開始した。

 Sigfoxのサービスはキャリア型と呼ばれる形態を取っており、利用する際にはKCCSと契約する。携帯電話と同様のイメージだ。サービス提供エリアを外れると使えないなど、システムを設計する際の自由度は低い。

 Sigfoxは、端末からクラウドへデータを送る上りの利用が中心となる。1回の通信で送れるデータは最大12バイトで、1日に送れる回数も最大140回まで。このため、Sigfoxが向いているのは、低い頻度で小さいデータを収集するといった用途になる。

 用途が限られる分、利用料金は格安だ。最も低料金のプランなら、1端末当たり年間100円程度で利用できる。消費電力も低く、一般的な使い方なら1端末当たり単3乾電池2本で5~10年程度は使い続けられる。

 Sigfoxの技術的詳細については、あまり公開されていない。UNBと呼ぶ狭帯域の信号を使うことと、同じフレームを何度も送り複数の基地局で受信したデータを合成することで、長距離通信を実現する。

エリアの自由度が高いLoRaWAN

 先行するアンライセンス型LPWAには、もう一つLoRaWANがある。こちらは、プライベート型と呼ばれるサービス形態になる。事業者と契約するのではなく、無線LANと同じように基地局を自分で設置する。対応機器などを調達し、自分でシステムを設計できるので、自由度は高い。通信事業者がカバーするエリアから外れた山あいなどでも、独自の基地局を設置して橋や川、ダムなどの状況を集めるといった使い方が可能だ。

 1回に送れるデータは最大11バイトとSigfoxよりも小さい。ただし、Sigfoxと違って双方向の通信が可能だ。

 LoRaWANは、米セムテックが提供するLoRa変調という独自技術がベースとなっている(図2)。通信全体の仕様はLoRaアライアンスという団体が規格化し公開しており、対応チップを複数の半導体ベンダーが提供している。

図2●LoRaとLoRaWANの関係
LoRaは各国のISM帯に応じてIoT向け無線通信を実現する変調技術を指す。それに対し、LoRaWANは実際にデータをやり取りするためのMAC層を含んだプロトコルの仕様全体を指す。
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 LoRa変調では、ノイズを減らすためにスペクトラム拡散という手法を使って、長距離での送受信を可能にしている。簡単に言うと、いったん帯域を広げて通信した後に、逆の手順で戻すとノイズが減って信号だけを取り出せるという手法だ。

 LoRaアライアンスでは、LoRa変調の上にMAC層として、用途に応じたクラスA、クラスB、クラスCの3つを定義している。

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