無線LANで最近注目を集めている技術の一つがメッシュネットワークだ。ここ1~2年の間に続々と製品が登場していて、今後ますます増えそうだ。このメッシュネットワークの仕組みを見てみよう。

電波が届くエリアを拡張したい

 免許不要で使える無線LANの電波は、出力が制限されているため届く範囲に限界がある。途中に何もない見通しの良い状況でもせいぜい20~40mが精一杯で、障害物があるとさらに短くなる。

 一般の家庭のように、壁や床、家具などがある環境では、アクセスポイントから離れた部屋には電波が届きにくい。最近はスマートスピーカーなどを使うために「家の隅々まで無線LANが届くことが求められるようになってきた」(バッファロー ブロードバンドソリューションズ事業部マーケティング課課長の下村 洋平氏)。メッシュネットワークを利用すれば、こうした不満を簡単に解決できる。

 無線LANの電波エリアを拡張する場合、これまでは中継器などを使うことが多かった。中継器とはアクセスポイントからの電波を受信し、それを増幅して再送信する機器のこと。アクセスポイントからの電波が弱まるところに配置すれば、そこからまた電波の届くエリアを拡張できる(図4-1表4-1)。

図4-1●無線LANエリアの拡張方法
家庭向けに気軽に使える中継器、企業ネットワークで使うことが多い無線LANスイッチに加えて、最近ではメッシュネットワークが登場し注目されている。
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表4-1●無線LANスイッチや中継器とメッシュネットワークの違い
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 中継器はブリッジまたはリピーターとして動作する。これらの違いは、リピーターが受信した無線LANの電波すべてを区別なく増幅して再送信するのに対し、ブリッジではあらかじめ設定したアクセスポイントの電波のみを増幅し再送信する。市販のアクセスポイント製品の多くはブリッジとして中継するモードを用意している。中継器専用の機器も大部分はブリッジとして動作している。

 一方、企業内などでは無線LANスイッチや無線LANコントローラーを使ってエリアを拡張しているところも多い。無線LANスイッチなどで各アクセスポイントの動作を集中制御する。エリア内に存在する端末の状況に応じてアクセスポイントの電波強度を調整して、データの送受信を制御する。

 ただし、無線LANスイッチや無線LANコントローラーとアクセスポイント間は有線のLANケーブルで接続するのが一般的である。このため、工事などが必要となり、中継器ほどは気軽に導入できない。

複数の通信ルートから選択

 メッシュネットワークは、これらの長所を併せ持つ方法といえるだろう。無線LANスイッチのように有線LANを用意する必要がなく、かつ中継器よりインテリジェントな制御ができる。

 例えば、電波が届く範囲に新たにメッシュネットワーク対応のアクセスポイントを追加すると、それらの間で情報を交換しながら必要な設定をして、エリアを自動的に拡張する。単純にエリアを拡張するだけなら、ほとんどの製品で最少限の設定あるいは設定なしで導入可能だ。

 メッシュネットワークにおけるアクセスポイントなどの機器は、ネットワークのトポロジーをメッシュ状に構成する。電波が届く範囲に複数の対応製品が存在する場合には、それらの中から最適なルートを自動的に選択する。いずれかの製品に故障が発生しても、別のルートに変更して使い続けることが可能だ。

 通信ルートを選択するアルゴリズムについては、各社とも詳細を明らかにしていない。基本的には、利用できる通信チャネルや電波強度、実効速度、干渉率、エラー発生率、距離といった情報をアクセスポイント同士で交換し、それらをベースに算出した値を比較し、最適と判断したルートを選択していると考えられる。スパニングツリープロトコルで利用するポートを選択するイメージに近い。

 アクセスポイント間で交換した情報は状況に応じて変化する。そのため、一定時間ごとに評価をし直して通信ルートを再選択するようになっている。

▼アクセスポイントの電波
実際には無線フレームに入っているSSIDの情報を見て、再送信すべきか判断している。
▼無線LANスイッチや無線LANコントローラー
無線LANスイッチでは、配下のアクセスポイントに接続した端末間の通信はすべて無線LANスイッチを介す。一方、無線LANコントローラーでは、ユーザー認証が済んで通常の通信が始まると、その後はコントローラーを介さずアクセスポイントやサーバーなどの端末同士が直接やり取りする。
▼スパニングツリープロトコル
有線のLANスイッチが搭載するプロトコル。物理的にループを構成するようにLANスイッチを接続すると、最適なルートを選んで自動的にツリー構造になるよう論理的に構成する。

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