今回は、MVNOが今後注目すべき二つのトレンドを取り上げる。IoTと5Gである。

 その前に、まずは日本国内と海外のMVNOの違いについて簡単に説明しよう。日本においてMVNOは、「格安スマホ」という言葉が表しているように、一般消費者をターゲットとした、比較的廉価なスマートフォン向け移動通信サービスとして認識されている。

 連載のこれまでの回で解説してきたように、日本のMVNOの多くは、ライトMVNOという事業モデルを採用している(図1)。ライトMVNOでは、MVNOが顧客管理システムや課金基盤を保有・運用する。ネットワークについてはレイヤー2接続という接続形態が主流で、PGWやPCRFなどのネットワーク設備を自ら持ち、データ通信の料金プランをMVNOが設定できる。

図1●国内でのライトMVNOとフルMVNOの違い
国内ではライトMVNOでもネットワーク設備の一部を持ち、データ通信の料金プランなどを設定できる。ただしホストMNOに依存する部分が多く、自由度は小さい。一方、フルMVNOは自由度が高いが、国内で展開している事業者はまだ少ない。
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 とはいえ、MVNO各社のネットワーク構成はおおむね画一的で、サービスの自由度は小さい(図2)。ホストMNOとMVNOの間の接続料も固定されていて、料金面での差異化は難しい。このためテレビCMやキャッシュバックなどのマーケティング施策に重点を置くMVNOが増えている。一方で、サービス提供の自由度が高く、差異化が図りやすいフルMVNOは日本ではとても少ない。

図2●4Gのネットワークアーキテクチャー
日本で一般的なライトMVNOの場合。RAN( Radio Access Network)は携帯電話事業者(MNO)が保有・運用する。相互接続点(POI)の場所はレイヤー2接続を想定している。
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 このような国内の状況と比較して、海外はどうだろうか。一概には言えないが、いくつかの国や地域では、MVNO市場は日本よりも長い歴史を持ち、多様性に富んだビジネスが展開されている。特にMVNOによるビジネスの歴史が長い欧州では、フルMVNOは珍しい存在ではない。同時に日本よりも多彩なライトMVNOが存在している。

 事業モデルの多様性は、MVNOのビジネスモデルの多様性につながる。例えばフルMVNOの事業モデルを採る事業者は、スマートフォン向けだけでなく、より幅広く付加価値の高いサービスを提供する。一方、ライトMVNOの事業モデルを採用している事業者は、低料金でニッチマーケットに特化したスマートフォン向けビジネスを指向することが多い。

 ここ数年、急成長を遂げた日本のMVNOは、シェアで見れば先行する欧州のMVNOとの差を大きく縮めつつある。しかし、その実態は多様性に乏しく、画一的な競争に苦しんでいる事業者が少なくない。日本のMVNOがさらなる成長を目指すには、より多様性に富んだビジネスモデルを実現し、他社との差異化を実現することが重要である。

「スマホの次」を求める声

 MVNOに限らず、世界の通信事業者が見据える次のビジネスモデルはIoTである。電話機をネットワークに接続してきた従来の通信事業者のビジネスモデルは、スマートフォンの登場により大きく成長した。だが、その成長も飽和しつつある。今後もスマートフォンの進化は続くだろうが、通信業界では「スマホの次」を求める声は大きい。その候補と目されているのがIoTだ。

 IoTでは、電話機だけではなくあらゆるものがネットワークに接続する。自動車や家電など身の回りにある様々なものがセンサーを備え、クラウド上のコンピューティングパワーとつなぐことで全く新しいサービスを実現する。

 これまでも、ネットワークにつながる電話機以外の機器やシステムとして、カーテレマティクスやネット対応家電などが登場している。しかしながら、いずれも設定の難しさやベンダーごとに異なるユーザーインタフェースなどが原因で、普及には至っていないのが現状だろう。

 だがこの状況は、Google HomeやHomeKitのような新たなプラットフォームや、NB-IoTなどの安価で省電力のセルラー通信規格の普及により変わっていくことが見込まれる。

 個人用途に限らず産業用途でも、IoTの波は今後大きく押し寄せる。慢性的な人手不足や安心・安全に対する意識の高まりにより、店舗や工場、交通、農林水産、エネルギーなど様々な産業にセンサーネットワークが広がり、IoTによる効率の向上や先進的なサービスの実現が期待される。

 IoTは、MVNOにとっても新たなビジネスチャンスになることが期待されている。IoTビジネスでは、通信事業者やクラウド事業者、機器メーカー、サービスプロバイダーなど、多種多様な事業者による協業が不可欠だ。この協業のすべてを携帯電話事業者が単独で担うことは困難である。MVNOの協力が必要になる。

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