今回は、緊急速報メールについて取り上げる。緊急速報メールとは、気象庁が発信する「緊急地震速報」や「津波警報」、地方自治体などが発信する「災害・避難情報」を携帯電話やスマートフォンに送信するサービスだ(図1)。災害・避難情報には、大規模な自然災害や弾道ミサイル攻撃の注意を呼びかける「全国瞬時警報システム」(Jアラート)から発信される情報も含まれる。

図1●緊急速報メールの例
携帯電話やスマートフォンに送られる緊急速報メールの例。気象庁が発信する「緊急地震速報」や「津波警報」、地方自治体が発信する「災害・避難情報」などが送られる。災害・避難情報には、大規模な自然災害や弾道ミサイル攻撃に関する注意を呼びかける「全国瞬時警報システム」(Jアラート)からの情報も含まれる。
[画像のクリックで拡大表示]

 2017年、MVNOが利用することの多いSIMロックフリースマートフォンが、緊急速報メールのうちJアラートを受信できないことがあると大きな問題になり、国会でも取り上げられた。なぜ受信できなかったのか。その理由について解説しよう。

端末はどのようにつながるのか

 緊急速報メールを説明する前に、まずは携帯電話やスマートフォンといった端末が、MVNOのネットワークにどのように接続するのか確認しておこう。ここでは、レイヤー2接続のMVNOを想定する(図2)。レイヤー2接続とは、2台のパケット交換機(SGWとPGW)の間に、携帯電話事業者(MNO)とMVNOのネットワークの分界点となる相互接続点(POI)を置く形態を指す。図2では3Gに関する部分は割愛し、4G(LTE)に関する部分のみを掲載している。

図2●4Gのネットワークアーキテクチャー
日本で一般的なライトMVNOの場合。RAN(Radio Access Network)は携帯電話事業者(MNO)が保有および運用する。相互接続点(POI)の場所はレイヤー2接続を想定している。
[画像のクリックで拡大表示]

 図2のRANは、Radio Access Networkの略。移動体通信において、基地局(無線局設備)および基地局とコアネットワークをつなぐためのネットワークを指す。3GではUTRAN、LTEではE-UTRANと呼ばれる。RANは携帯電話事業者が運用する。

 また、4Gに対応した基地局はeNodeBと呼ばれる。3Gの基地局であるNodeBの発展形であるため、この名が付けられた。

 基地局の第一の役割は、上位のプロトコルのデジタル信号を搬送波(キャリア)に載せて無線で通信することである。だが4Gの基地局は単なる無線変調装置ではない。基地局はRRCと呼ばれるプロトコルを用いたリンクを端末との間で確立し、RRCを介して上位プロトコルを伝搬するネットワーク層のノードとしても機能する。

 次にコアネットワークを見てみよう。4Gのコアネットワークのうち、制御信号用のネットワークはC-Plane、ユーザーデータ用のネットワークはU-Planeである。ここでの制御信号とは、端末が無線ネットワークに接続したり、電話の発着信を制御したりするなど、ネットワークや端末を管理するために使用する信号のこと。

 C-Planeは、MMEと加入者管理装置(HSS)で構成されている。U-Planeは、SGWとPGWという2台のパケット交換機で構成されている。前述のようにレイヤー2接続のMVNOではこの間にPOIがあり、SGWは携帯電話事業者が、PGWはMVNOが運用する。コアネットワークのC-PlaneとU-Planeは、RAN(すなわち基地局)とそれぞれ接続されている。

 さてここで、端末をネットワークに接続した場合、各ノードがどのように動作するのか見てみよう(図3)。

図3●端末をネットワークに接続したときの各ノードの動き
端末の電源を入れると、端末は基地局が送信している同期信号と報知情報を受信。それにより接続する基地局を決定し、RRC(Radio Resource Control)と呼ばれるプロトコルのリンクを確立する。その後、制御信号用ネットワークC-Planeおよびユーザーデータ用ネットワークU-Planeに接続する。
[画像のクリックで拡大表示]

 端末の電源を入れると、端末は基地局が送信している同期信号と報知情報を受信する(図3(1))。

 同期信号は、端末と基地局が送受信のタイミングを同期するために使われる。同期信号と併せて送られる報知情報には様々な情報が含まれる。

 そのうちの一つが、携帯電話事業者を識別するPLMNである。例えばNTTドコモなら44010、ソフトバンクなら44020だ。そのほか、基地局を識別するためのCell IDやサポートしている帯域幅など、接続を確立するための基本的なパラメーターが含まれる。

 報知情報により周囲の基地局の情報を収集した端末は、基地局のPLMNや電波強度を基に、接続する基地局を決定し、RRCのリンクを確立しようとする(同(2))。

 このとき、端末から基地局へ送る最初の信号だけは、他の端末の通信を阻害しないよう専用のチャネルで送信される。その後は、基地局が指示したタイミングで通信し、問題がなければ基地局と端末間でRRCのリンクが確立する。リンクが確立すると、これを使って、コアネットワークの制御信号用ネットワークC-Planeへの接続要求が端末から送信される(同(3))。この接続要求はAttach Requestと呼ばれる。

 Attach RequestはC-PlaneのMMEとHSSによって認証(Authentication)され、問題がなければC-Planeへの接続が確立する(同(4))。

 その後、端末から通知されるAPNを基にパケット交換機PGWに接続する。すなわち、コアネットワークのU-Planeに接続する(同(5))。

 なお、音声通話をVoLTEで実現している場合には、この後にIMSに接続するが、図3では割愛している。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経NETWORK」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら