スタジアムなどでのライブ中継の現場では、映像・音声・付随データを一般視聴者に向けて安定して配信する目的で、IPを使ったリアルタイム映像伝送サービスが利用されている。

 この特集では、英パフォーム・グループが提供する映像配信サービス「DAZN」の明治安田生命Jリーグ中継を例に、映像配信を実現する技術を解説する。Jリーグのライブ中継を支えているのはNTTコミュニケーションズの「映像ネット」である。

盛り上がるライブ中継配信

 ライブ中継とは、生放送や生中継とも呼ばれ、演技・演奏・スポーツといった放送コンテンツを一旦録音・録画することなく、リアルタイムに視聴者に伝える映像配信を指す。報道番組やバラエティー番組においても、価値あるニュースの迅速な報道や臨場感のある演出のため、ライブ中継が実施される場合が多い。

 現在は放送の媒体が地上波、衛星、インターネットと多様化しており、クラウドやデバイス関連技術の進化と普及に伴い、インターネットを介して映像を配信するサービスの人気が高まっている。2011年にHulu、2015年にNetflixやAmazonプライム・ビデオ、dTVが開始。2016年にはDAZNが始まった。

 日本の有料動画市場は、2011年から2015年の5年間で799億円から1531億円へと大きく伸びている

 特にスポーツはライブ中継の価値が高い。インターネットでの放送も一般化し、盛り上がりを見せている。2019年のラグビーワールドカップを皮切りに、日本で多くのビッグイベントが控えており、多様な媒体でのライブ中継がさらに盛り上がるだろう。

インフラの全体像

 ライブ中継では、スタジアムから視聴者まで何らかの手段で映像を届ける仕組みが必要になる。DAZNを例にその全体像を示す(図1-1)。

図1-1●Jリーグライブ中継を実現するインフラの全体像
DAZNで配信されるJリーグのライブ中継は、NTTコミュニケーションズが提供する映像伝送サービスである「映像ネット」を使って、スタジアムのJリーグプロダクションからコンテンツ配信事業者に届けられる。
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 スタジアムではJリーグの公式映像を制作するJリーグプロダクションが、試合の映像や音声にCGや解説音声を入れ込み、すぐに放送可能なコンテンツ(いわゆる完パケ)を現場で仕上げる。

 インターネットなどを通じて視聴者に映像を配信するのはコンテンツ配信事業者だ。今回の例では、DAZNを提供するパフォーム・グループが該当する。DAZNの配信拠点に届けられたコンテンツは、インターネットライブストリーミングに適した形式に変換され、各視聴者に配信される。

 Jリーグプロダクションのような制作会社からコンテンツ配信事業者までコンテンツを届けるのは、映像伝送事業者の役割だ。映像伝送事業者は制作会社が作ったコンテンツを受け取り、映像ネットによりコンテンツ配信事業者が指定した拠点まで伝送する。

 映像の伝送には、通信事業者が提供する光回線や衛星通信回線、LTEを用いる場合や、コンテンツ配信事業者の自前の無線回線などを用いる場合があり、多様である。DAZNのライブ中継で利用されている映像ネットは、光ファイバーによる映像伝送サービスに当たる。

 映像伝送事業者は制作会社からSDIという規格の信号でコンテンツを受け取る。HDTVの場合、HD-SDIという規格になり、伝送速度は約1.5Gビット/秒になる。映像ネットでは、これを数十Mビット/秒程度に圧縮するとともに、IPパケット化してコンテンツ配信事業者まで届ける。

 スポーツ中継では、映像以外にもライブ中継を盛り上げるための様々なデータが必要だ。それらについては映像ネットが映像回線と併せて提供するVPNを用いて伝送されている。

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