2019年7月11日、小惑星「リュウグウ」への2回目のタッチダウン(着陸)を成功させた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」。表向きは順調に見られている同プロジェクトだが、実はここに至るまでの道のりは平たんではなかった。第1回は2回目のタッチダウンを成功させるまでの軌跡をたどる。

 「太陽系の歴史のかけらを手に入れられました」─。2019年7月11日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏は、報道陣に向けて誇らしげに報告した(図1)。JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」は、同プロジェクトの最大の山場とされる小惑星「リュウグウ」への2回目のタッチダウン(着陸)に挑戦し見事に成功させのだ。

図1 2回目のタッチダウンに成功した直後の記者会見で喜びを語るはやぶさ2プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏
(写真:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 2回目のタッチダウンは、同プロジェクトにとって非常に大きな意味を持つ(図2)。はやぶさ2のミッションは、生命誕生のカギを握る水と有機物が含まれている可能性のあるリュウグウの“かけら”(物質)を持ち帰ること。できることなら小惑星の複数の地点から表層の物質だけでなくの内部の物質を、である。

(a)
[画像のクリックで拡大表示]
(b)
[画像のクリックで拡大表示]
(c)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 2回目のタッチダウンの様子
サンプラーホーン撮影用小型モニターカメラ「CAM-H」による、タッチダウン4秒前(a)、同直後(b)、同4秒後(c)の様子。画像中央に見える白い円形の部分がサンプラーホーンの先端部。(a)は空中に何も飛び散っていないが、(b)にはサンプラーホーン内部で発射された弾丸と上昇に転じるために噴射したスラスターの影響でリュウグウの物質が巻き上げられ始めたとみられる様子が捉えられている。さらに(c)では、巻き上げられた物質が上空に上がっていく様子が分かる。(出所:ISAS/JAXA)

 複数地点の物質を比較したり、表層と内部の物質を比較したりできれば、より詳細な分析が可能になる。例えば、表層と内部の物質を比較すれば、表層の物質における太陽風や宇宙線による影響を評価できる。もし内部の物質がそれらの影響をあまり受けていなければ、太陽系形成期の詳細な情報を得られる可能性がある。特に、有機物は太陽風や宇宙線の影響を受けやすいため、内部の物質の持ち帰りには大きな価値がある。

 1つの天体の複数地点から試料を採取するマルチサンプリングや、地下物質を採取する地下サンプリングは、地球・月以外の天体では前例のない快挙。2回目のタッチダウンは、その快挙の実現に向けた最大の関門だった。

2月には1回目に成功

 2回目のタッチダウンで目指したのは、2019年4月5日に衝突装置(Small Carry-on Impactor、SCI)の銅板(ライナー)を撃ち込んで形成した人工クレーターからの噴出物(イジェクター)の採取である(図3)。人工クレーターの中心から約20mの地点にある半径3.5mの領域「C01-C」に堆積したとみられるイジェクターの採取に挑んだ。JAXAによれば、この領域にはリュウグウの深さ0~約1mから掘削された物質の混合物が、イジェクターとして平均約1cmの厚みで堆積していると推定される。

図3 衝突装置(SCI)の爆発部
円すいの内部で火薬を爆発させて、底面の銅板(ライナー)を吹き飛ばす。想定通りなら、2km/秒の速度で小惑星に衝突するように設計されている。(写真:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 同プロジェクトでは、既に同年2月22日に1回目のタッチダウンを成功させており、「L08-E1」(愛称:たまてばこ)と呼ぶ領域の表層物質を採取できたとみられている。2回目のタッチダウンでは、それとは別のC01-Cへのタッチダウンを果たし、小惑星内部の物質が採取できたと期待されている。無論、実際に試料を採取できたかどうかは、地球帰還後に確認してみないと分からないが、はやぶさ2が搭載するサンプラーホーン撮影用の小型モニターカメラ「CAM-H」が撮影したタッチダウン前後の1秒間隔のコマ送り画像から、試料を採取できている可能性は高い(前出の図2)。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら