AM(アディティブ・マニュファクチャリング)/3Dプリンティングの産業利用が遅れているといわれる日本でもAM先進企業は存在する。その1社がパナソニックのライフソリューションズ社だ。同社ではAMと切削のハイブリッド造形技術を開発し、社内で射出成形の量産用金型に適用。社内活用を進める中で開発した造形技術で約100件の特許も取得している*1

*1 パナソニックは開発した技術を松浦機械製作所やソディックなどにライセンスしており、各社がハイブリッドAM装置として製品化している。

AMと切削のハイブリッド製造を金型に適用

 同社の取り組みで特徴的なのは、AMと切削加工を混在させた「ハイブリッド金属AM」である点と、適用対象を射出成形の量産用金型に絞っている点だ(図1)。平らに敷き詰めた金属粉末の上面をレーザーで走査して溶融結合させる粉末床溶融結合(パウダーベッドフュージョン:PBF)の造形プロセスの途中に切削加工を挿入する*2

図1 AMと切削のハイブリッド造形
AMにおける積層造形の途中で輪郭を切削加工するプロセスで造った金型(写真左)は、寸法精度±10μm、表面粗さ(Rz)5μmを実現。写真右はAMだけで造った金型。(写真:日経ものづくり)
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*2 具体的には、約10層分(0.5mm)のAM工程を経た後で、断面形状の輪郭部分(造形品の表面)をエンドミルで切削加工する。

 「(金型では)表面粗さ10μm以下が必要」(パナソニックライフソリューションズ社ものづくり革新本部生産技術センター製造システム開発部金型成形開発課主幹の阿部諭氏)という。しかし、金属AMだけでは、造形物の表面に金属粉末が付着し、表面粗さが悪化してしまう。具体的には100μmほどになるという。そこで、切削加工を組み合わせて仕上げる手法にした。

 適用対象を金型に絞った理由については「金型には抜き勾配があり、基本的にサポート部*3が不要になる」(同氏)というメリットを挙げる。サポート部を設けると、それを除去する後工程が必要になるなど課題が増える。用途を絞って課題解決を図っていったのだ。

*3 重力などで硬化部分が変形しないよう、下から支える構造。PBFでは未硬化粉末があるためサポート部の必要性は低いが、金属材料は密度が大きいためサポート部が必要となる場合がある。

 同社は1990年代からAMに取り組んでおり、光硬化性樹脂を使う液槽光重合(光造形法)や金属PBFを、試作や少量試作型に適用していた。こうした取り組みの延長として2000年にハイブリッド金属AMの基本特許を取得して装置の開発を開始。試作金型を製作手段として使いつつ開発を進め、2010年からは量産用金型に適用できるレベルに引き上げた。金属AMで造形した金型では「数万~数十万ショットは可能」(同氏)と耐久性も十分だ。

 阿部氏はその後、AMで金型を造るメリットを事業部の担当者に説明しながら徐々に社内展開を進めた。「認知度が高まり、メリットを実感した人も増えてきた。最近では繰り返し使う製品も増えてきている」(同氏)という。

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