AM(アディティブ・マニュファクチャリング)/3Dプリンティングの産業利用で先行するドイツ。具体的な用途を想定したAM活用の研究開発を産官学が連携して進めている。その中心となるのが欧州最大の応用研究機関であるドイツ・フラウンホーファー研究機構(以下フラウンホーファー)である。

 フラウンホーファーは72の研究所で構成され、各研究所の所長は隣接する大学の教授を兼ねるなどドイツ各地の大学と密接な関係を持つ。一方で研究予算の約1/3は民間企業からの委託研究で賄うなど、産業ニーズ主導の研究に力を入れる。このフラウンホーファーの取り組みを通して、ドイツにおけるAM産業利用の最前線を見てみよう。

70社が参加する20のプロジェクト

 フラウンホーファーが関係するAMの研究プロジェクトは数多くあるが、その1つが「AGENT-3D」と呼ばれるコンソーシアム。2021年までの計画で現在進行中だ。9000万ユーロの予算の内、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)が約45%を負担し、残りをコンソーシアムに参加する企業などが出資する形だ。

 同コンソーシアムの中心人物で、フラウンホーファーの研究所の1つ、材料・ビーム技術研究所(IWS)で付加製造部門部長を務めるエレナ・ロペス氏は「AGENT-3Dでは、AMを産業利用する上で解決すべき課題をテーマにしている。複数の材料を混在させるマルチマテリアルや既存工法とAMを混在させるハイブリッド製造などもテーマになっている」と語る(同氏のインタビュー記事を本号の挑戦者に掲載)。

 AGENT-3Dでは現在、さまざまなテーマの約20の研究プロジェクトが並行で進んでいる(図1)。各プロジェクトで参加メンバーは異なっており、合計すると約70社がプロジェクトに参加する。「コンソーシアムにパートナーとして参加する企業は120社を超える」(ロペス氏)という。フラウンホーファーからもIWSだけでなく、複数の研究所が参画する*1

図1 AMの共同研究コンソーシアム「AGENT-3D」の主要プロジェクトとスケジュール
ドイツに拠点を置くさまざまな企業とフラウンホーファー研究機構などが連携し、産業界での具体的なAM活用を想定した研究プロジェクトが進められている。ほとんどが2~3年間のプロジェクトで、2019年から2020年にかけて終了する予定だ。(フラウンホーファー研究機構の資料を基に日経ものづくりが作成)
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*1 IWSのほか、国際マネジメント・知識経済研究所(IMW )、生産システム・デザイン技術研究所(IPK)、工作機械・成形技術研究所(IWU)、エレクトロ・ナノシステム研究所(ENAS)、生産技術・応用マテリアル研究所(IFAM)、ファクトリーオペレーション・オートメーション研究所(IFF)、セラミック技術・システム研究所(IKTS)がコンソーシアムのメンバーになっている。

 プロジェクトに参加する企業の業種は、航空宇宙や自動車、鉄道、エネルギー、医療と多岐に渡る。AGENT-3Dでは、それぞれのニーズに対応した複数のプロジェクトが立ち上がっている形だ。こうした具体的な研究プロジェクトが始まったのは2014年以降だが「プロジェクトをどう進めるのかといったロードマップや戦略面での検討は2012年ごろから始まっていた」(同氏)。特定の産業での応用を想定した研究プロジェクトだけでなく、各産業に共通するテーマの基礎的なプロジェクトもある。

 その1つがAMを適用した場合の製造物責任の問題だ。法律の専門家がプロジェクトに入り、設計や造形、材料の担当が分かれていた場合の責任をどのように考えるべきなのかといったことを検討した。「結果的には従来の製造方法と同じ考え方を適用できると分かった」(同氏)という。

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