3Dプリンターの産業利用が広がってきている。それは試作品を造る手段としてではなく、顧客に販売する製品の製造を目的とした利用だ。従来は部品単価が高い航空宇宙分野や医療分野などが主役だったが、ここにきて自動車や鉄道などの輸送機器、一般消費者向けの製品などでの活用例も増えている。近年では3Dプリンティングを「AM(アディティブ・マニュファクチャリング)」と呼ぶようになってきており、本特集でも以降はAMを使っていく。

 AM技術の進化は速く、課題だった生産性や精度、物性などが改善されつつある。こうした進化を見越した一部の企業は実運用に向けた研究開発や実践に早期から取り組み、そのノウハウを蓄積してきた。その結果、AMの活用で大きな効果を得られる具体的な用途を見定め、その準備を整えつつある。

 AM技術はここ数年で急激に進化しており、市場規模も今後10年で大幅に拡大する見込みだ*1。金型を使った成形と切削加工に、第3の選択肢としてAMを加えた製造の新時代はもう目の前にある。

*1 例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術戦略研究センター(TSC)が2019年2月に公表した予測では、2016年には1000数百億円だった金属AM市場(装置、材料、造形品)は2030年に3兆円を超える。海外の調査会社などの予測では、これよりも速いペースで市場が拡大するというものもある。

AM利用のメリットは大きく2つ

 まずAMのメリットについて、改めて整理しておこう。大きくは2つあると考えられる(図1)。

図1 AMの特徴とメリット
AMの特徴である形状自由度の高さは、部品の一体化やラティス構造/トポロジー最適化の採用などを可能にする。軽量化をはじめとした新たな機能/性能の実現につながる。一方、保守部品の供給やマスカスタマイゼーションなどの多品種単品生産を短納期で実現できることもAMの大きなメリットと言える。
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 第1に従来は実現できなかった機能や性能を実現し、製品や部品の付加価値を大幅に高められることだ。その最大の理由が形状自由度の高さ。工具との干渉や抜き勾配といった制約から従来工法では造れないような複雑な形状でも一体造形できる。これにより、軽量化を実現したり、組立工程や調達の削減による低コスト化/短納期化を実現したりできる。

 付加価値向上は形状自由度の高さに起因するものだけではない。近年では、AMによって部品内で複数素材を最適配置するマルチマテリアルの手法が進んでいる。これは、微小な単位で材料を付加していくというAMならではの特徴である*2

*2 複数の樹脂をインクジェットで吐出する際に異なる材料を混ぜたり、部分的に炭素繊維を配置した炭素繊維強化樹脂を造形したり、2種類の金属粉末の混合比を変化させながら吹き付けたりといった技術が既に実用化、もしくは開発されている。

 第2のメリットが、少量生産品での低コスト化や短納期化の実現だ。これは形状自由度の高さ、つまり部品の一体化でも得られるメリットだが、背景となるAMの特徴が異なる。型を使わずに1品単位で造形できる、3Dモデルをはじめとしたデジタルデータで制御しやすいという特徴が少量生産品で生きてくる*3。こうした特徴が、在庫レスでの保守部品の提供や個別最適化した製品を低コストで提供するマスカスタマイゼーションなど、新しいビジネスモデルの実現にもつながっていく。

*3 形状が異なる複数の部品を同時並行で造形できるAM装置もあり、「多品種」での少量生産にもAMは適しているといえる。

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