スペースXと並んで米国ニュースペースの雄であるブルーオリジン。これまでの打ち上げ実績は、弾道飛行を行う有人宇宙船「ニューシェパード」の試験打ち上げのみだ(図1)。ニューシェパードもカプセル宇宙船はパラシュートで、推進モジュールは逆噴射による着陸で回収しする「回収・再利用型」であり、この点ではスペースXのファルコン9と共通する。

図1 ブルーオリジンのロケット「ニューシェパード」
弾道飛行有人宇宙機であるニュー・シェパードを打ち上げた様子。(出所:BlueOrigin)
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 ニューシェパードに続く衛星打ち上げ用ロケット「ニューグレン」は現在開発中で、初打ち上げは2020年を予定している。

 このように実績だけ見るとスペースXに劣る。それにもかかわらず、宇宙産業界の同社に対する信頼の厚さは、実績を積み重ねているスペースXに勝るとも劣らない。実際に開発中のニューグレンは1号機の打ち上げ前から、幸先よく幾つもの商業打ち上げ契約を獲得している。

 創業者であるジェフ・ベゾスへの信頼が背景にあるのは間違いない。説明するまでもないがベゾスは、今やクラウドビジネスで世界的な情報と物流の大手となった米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の創業者でありCEO(最高経営責任者)だ。ベゾスは、個人保有のAmazon株式を計画的に売却し、ブルーオリジンに年間10億ドル規模の投資を継続的に行っている*1

*1 年間10億ドル(2019年5月時点の為替レートで1100億円程度)規模の投資は、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の年間予算規模約1800億円の6割超。ジェフ・ベゾスの総資産は1400億ドル超と言われており、年間10億ドルの投資を数十年以上に渡って続けるのに十分だ。

 ベゾスの存在と同じか、それ以上に信頼をつかんでいるのは、実績で先んじるスペースXを追い越す可能性を十分に秘める同社のビジネス戦略だ。ブルーオリジンは、宇宙ビジネスにおけるロケットの新たな基準を築こうとしている。そして、その方向性を裏付ける安定した技術開発を進めている。そこに宇宙産業界は大きな期待をかけている。

有人飛行を目指すと表明

 2000年の創業後、ブルーオリジンはロケットエンジンの開発と、逆噴射を使った垂直着陸技術の開発を延々と続けていた。ロケットエンジンは推力9kN(900kgf)級の「BE-1」、同140kN(14tf)級の「BE-2」、490kN(50tf)級の「BE-3」と大型化し、現在は2400kN(240tf)級の「BE-4」を開発している(図2、3*2

図2 大型エンジンBE-4
現在開発中の大型エンジンBE-4。2400kN(240tf)級だ。(出所:BlueOrigin)
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図3  BE-4燃焼試験の様子
(出所:BlueOrigin)
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*2 その他、月着陸船「ブルームーン」用に40kN(4tf)級の「BE-7」の開発を表明している。未公表の「BE-5」「BE-6」についても何らかの開発を進めていると推定される。

 2005年には試験機「シャロン」を使った噴射による離着陸試験を開始している。シャロンはロケットエンジンではなくジェットエンジンを使い、誘導制御技術の試験を目的としていた。

 2006年11月からは、ロケットエンジンを使った実験機「ゴダード」を使い、エンジン噴射を使った離着陸の試験を始めている*3

*3 ゴダードに関しては、最初の試験成功後にわずか50秒ほどの動画が公開されたのみで、その詳細は今も公表されていない。動画像からわずかに装備している9基のエンジンが見え、噴射炎が一切見えないことから、過酸化水素を触媒で分解して噴射するBE-1エンジンを使用していると推測できるだけだ。

 スペースXに比べて情報開示に積極的でないブルーオリジンは当初、宇宙産業に参入する目的すら明確ではなかった。しかし、2011年に有人宇宙飛行を目指していると判明した。ブルーオリジンは、米航空宇宙局(NASA)の有人宇宙船開発に補助金を付けるプロジェクト「CCDev」に応募して選定されたからだ。CCDevは2011年4月に、ブルーオリジンが開発している有人宇宙船がカプセル型だと明らかにした。

 2014年2月には、新型機打ち上げの認可を米連邦航空局(FAA)から取得。2015年4月29日にニューシェパードの初打ち上げを実施した。しかしこの時は、垂直着陸に失敗して推進モジュールが墜落している。

 ニューシェパードは、1号機も含めて2019年までに3機製造され、2019年5月15日時点では、2号機と3号機がそれぞれ5回の無人再利用飛行に成功している。

 同機は有人飛行だけではなく、無人の微小重力実験にも使用できる。2019年1月23日の3号機4回目の飛行(通算10回目)では、NASAの実験装置8種類を搭載して初めての微小重力実験飛行を実施。2019年5月2日の5回目(通算11回目)の飛行では、NASAと大学の38種類の実験装置を搭載しての微小重力実験飛行を実施した。

 ブルーオリジンは、2019年中に現在建造中の4号機を使った初の有人弾道飛行を行うとしている。

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