変電所から海岸、内陸部、そして海底まで。新幹線を守る地震計は平成の間に大幅に増えた。地震をいち早く検知し、走行中の列車を安全に止める新幹線の「早期地震検知システム」は、災害に対して設備を守るさまざまな取り組みの中でも最も大規模なものの1つ。しかも、「阪神・淡路大震災」「新潟県上越地震」「東日本大震災」と地震に遭うたびに教訓を得て、強化を図っている。

検知後3秒でブレーキ

 東日本旅客鉄道(JR東日本)は2018年末時点で135カ所もの地震計を保有する(図1)。この地震計の観測を基に、揺れが大きいと想定される地域の変電所で送電(き電)を停止。新幹線の車両は停電があると、2秒程度で非常ブレーキがかかる仕組みになっている。停電は地震のP波(初期微動)検知の約1秒後になるため、合計3秒でブレーキがかかる。ブレーキを少しでも早くかけられれば、大きな揺れが来るまでに減速でき、すなわち安全性を高められる。

図1 JR東日本「早期地震検知システム」の地震計の増強
開業時にはS波(主要動)を捉えるタイプだった地震計は、P波(初期微動)を検出するタイプに代わり、2018年末時点で135基を数える。2017年11月には、「日本海溝海底地震津波観測網(S-net)」(防災科学技術研究所)の地震計の情報も取得できる体制になった。(JR東日本の資料を基に日経ものづくりが作成)
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 平成の初めごろまで使われていたのは、地震のS波(主要動)によって倒立振り子が物理的に倒れるというシンプルな装置。この装置を各変電所に備え付けて、変電所が揺れたら回路を遮断して停電させる仕掛けだった。

* 電源が欠けても動作する長所があり、現在でも最後のバックアップとして残っている。

 P波を検知する方式に変わったのは1998年頃からだ。JR東日本は「コンパクトユレダス」と呼ばれる装置を新幹線の各変電所に導入し、P波検知後1秒で送電を停止できるようにした。コンパクトユレダスはP波の状況から、S波の到達前にその大きさを予測する。すなわち、変電所が大きく揺れ始める前に送電を止め、付近を走行している列車を停止させられるようになった。

 2004年の新潟県上越地震では、上越新幹線「とき325号」の脱線事故が発生。このときもコンパクトユレダスが動作し、とき325号を含めて付近の列車を止め、被害の拡大を防いだ。しかし同地震のように、沿線の直下で発生してS波到達までの余裕が少ない直下型地震が発生したときには弱い。

 そこで2005年から、JR東日本はシステムを大きく改良した。1つは沿線の地震計の増設であり、平均21km間隔だった地震計の配置を平均13km間隔にした。震央が地震計同士のちょうど中間である場合、震央から地震計までの距離が短くなるため、地震計がP波を検出するまでの時間が最大1秒程度早まると見込める。

 合わせて、地震の推定方式を変更し、P波の立ち上がりから震央と大きさを推定して、例えば震央近くの区間を停電させるようにした。さらに推定結果は、地震計同士がネットワークで共有する。震央に一番近い地震計がいち早く震央と大きさをはじき出すと、他の地震計はその情報を直ちに受け取り、場合によっては自らがP波を検知する前に停電の指示を出せる。

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