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 戦争があればともかく、科学技術や情報通信技術が進歩した日本で、災害により何千人もの人が亡くなることはもうない─というのが平成の初期に多くの人が持つ感覚だったのではないだろうか。現実には1995(平成7)年1月の阪神・淡路大震災で約5000人が亡くなった。その教訓から建築物の耐震対策が進んだ2011(平成23)年3月の東日本大震災では、建築物の倒壊による犠牲者は少なかった。しかし869(貞観11)年以来といわれる津波により約1万6000人が犠牲になり、さらに福島第1原子力発電所がメルトダウンする大事故が発生した。

 平成の自然災害では、常に前例のない、想定外の出来事が生じた。2016(平成28)年の熊本地震では、震度7の地震動が2度にわたって襲った。2018(平成30)年の北海道胆振東部地震では、北海道全域に停電が発生した。

 一方で製造業に関しては、平成は「効率化が大きく進み、冗長性がなくなった時代」(レジリエンシープランニングオフィス代表取締役の伊藤毅氏)といえる。1991年(平成3)年からの「失われた20年」といわれる日本経済が低迷した時期、メーカーは在庫と設備を絞り込んだ。そのため、工場自体が被災すればもちろん、部品供給が止まっただけでも工場のラインはすぐ止まるようになった。「冗長な経営資源を抱えていても、市場の伸長がすべて覆い隠してくれた昭和の時代はとうに去った」(同氏)のだ。

想定外の出来事が短時間で進行する

 「そのため、何か起こったときのインパクトがすごい勢いで広がる」(同氏)。サプライチェーンのどこかが止まれば、そこから部品を得ている工場が止まり、その工場が製品を納入している工場も止まる、と影響が連鎖的に伝わる。

 その影響も想定した範囲内なら、事前に立てた計画に沿って動ける。しかし平成の災害は想定外で、しかも広域にわたる出来事の連続だった。実際に起きている出来事に即して、選択可能な手段で何ができるかを短時間で判断、実行する能力も重要とみなされるようになった(図1Part2)。

図1 想定強化か、想定外を前提にするか
平成年間に連続した災害によって、企業や事業体はより重い被害を想定するようになった。しかし、それでも想定しきれなかった場合の対応策こそが重要になってきている。
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 近いところでは、2018年の北海道全域の停電時。北海道新聞社は当日の夕刊を発行した(*1。もともと事業継続計画(BCP)により、北海道内に6カ所ある印刷工場のうち2カ所が同時に止まっても、残りの印刷工場で代替する体制になっていた。しかし実際には、自家発電装置を備えた本社工場以外は稼働できない状況だった。北海道全域が停電するという事態は、北海道新聞社にとって想定外だった。それでも同社は、ページ数は減らしたものの本社工場で6工場分を印刷し、トラックを集結させて北海道全域に発送した。

表 最近の災害にみる事業継続の例
事前の対応が奏功しているが、臨機応変な対応も重要。日経 xTECH「ポスト平成 災害に克つ技術」(https://nkbp.jp/2GwXcHa)から。
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*1 「史上初のブラックアウトでも道新が夕刊を配達できた理由

 2018年7月の西日本豪雨では、広島市と呉市の間でJR呉線、国道31号、広島呉道路がそれぞれ被災。通行止めになった広島呉道路の一部区間を臨時にバス専用道路として使い、災害時BRT(Bus Rapid Transit、バス高速輸送システム)のルートを構成、JR呉線が復旧するまでの臨時の公共交通サービスが実現した*2

*2 「“市民の足”を取り戻せ、豪雨後の復旧渋滞を擦り抜けた災害時BRT

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