「変更点と変化点に着目し、新設計に潜む問題を発見・解決する未然防止手法。それがQuick DRだ」。日産自動車元技術顧問で、Quick DRエキスパート講師の大島恵氏はこう話す。「日経 xTECHラーニング」で「開発者から学ぶ 不具合未然防止手法 Quick DR」の講師を務める同氏に、Quick DR導入のメリットや使いこなすための注意点などを聞いた。(聞き手は高市清治)

大島 恵 氏
日産自動車Quick DRエキスパート講師
日本科学技術連盟 Quick DR コンソーシアム代表

不具合の未然防止手法である「Quick DR」が自動車業界以外でも導入されています。

大島氏:農業機械メーカーのクボタ、ハウスメーカーの積水化学工業や、ソニーなどでも採用されています。Quick DRは日産自動車が開発した不具合の未然防止手法ですが、後述する通り「設計の変更点/変化点に着目し、新設計に作り込んでしまった問題や不具合を効率よく見つけ出して解決する」という考え方は、自動車設計に限らず非常に広い分野で適用できる汎用性の高いものです。機械系の設計だけでなく材料や製造工程の変更、ソフトウエアの設計変更に適用する事例も増えています。

導入後に故障発生率が半分以下に

Quick DRがどのような手法なのか、説明してください。

大島氏:未然防止では周知の通り、「デザインレビュー」(DR)を軸に取り組みます。全ての部品、全ての不具合についてレビューする「Full Process DR」を従来から実施していました。Full Process DR は有効ですが、全く新しい設計に対して未然防止する手法のため、相当の工数がかかり新規性が高い設計に限定されていました。そこで私たちはDRをもっと効率的に広く実施するために、新規性が高くない設計では設計の変更点/変化点を中心にレビューする「Quick DR」を考案しました。

 大部分の製品では通常、ゼロから設計する例はありません。自動車設計では、基準となる従来設計の一部を変更して、新製品の設計とするケースの方が圧倒的に多い。この「従来設計からの変更点/変化点」に着目し、その変更点/変化点に絞ってDRを実施する手法です。

 日産自動車ではQuick DRの導入後、不具合の発生は格段に減少しています。Quick DR導入後10年以上を経て、新車の販売後3カ月時点、12カ月時点で発生する品質上の不具合をモニターした品質指標で、Quick DR導入前に比べて故障の発生率が半分以下という結果が出ました。再発防止型の品質改善活動を併せた結果ですから単純比較はできませんが、Quick DR導入の効果を測る目安にはなるでしょう。

電気自動車「リーフ」でも適用

新技術を集積した電気自動車のような製品でも、Quick DRは有効でしょうか。

大島氏:有効です。電気自動車のように新規性の高い製品でも、構成部品には既存の製品を多く使います。全部ゼロから設計するわけではありません。既存の部品を基準として設計した部品にはQuick DRが適用できます。

 誤解がないようにしたいのですが、Quick DRだけでDRを完結させるわけではありません。新規性の高い部品の設計ではFull Process DRを実施して不具合の原因となり得る要素を全て洗い出し、解決して万全を期す必要があります。新規性の低い部品ではQuick DRで効率的に未然防止を図るという風に使い分けるのです。

 良い例が、2010年に日産自動車が発売した、世界初の量産型電気自動車「リーフ」です。日産自動車でQuick DRを正式に導入したのが2008年ですから、リーフは設計時にQuick DRを採用した最初期のプロジェクトになります。

 何せ「世界初」ですから、これほど新規性の高い製品はありません。Full Process DRを10以上実施しました。ではQuick DRはしなかったかというと、そんなことはありません。モーターやインバーターなどの電気自動車の基幹部品でも既存の部品を基準として、電気自動車用に設計している部分があります。このような部品ではQuick DRを実施しています。

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