「中国での不良品やトラブルの原因の多くは日本の設計者の『設計力』にある」。ロジ代表で元ソニー設計者の小田淳氏はこう訴える。「日経 xTECHラーニング」で「元ソニー設計者直伝 トラブルを防ぐ日本設計×中国製造の具体的実践法」の講師を務める同氏に、中国ビジネスでトラブルを回避する秘訣や注意点を聞いた。(聞き手は高市清治)

小田 淳 氏
ロジ代表(元ソニー設計者)

「中国での不良品やトラブルの原因の多くは、日本の設計者の設計力にある」と訴えられています。

小田氏:はい、その通りです。ソニー在籍時に7年間、中国で働いた経験から導いた結論です。一般に言われるように、中国での仕事ではトラブルが少なくありません。製造業でも同じです。日本で部品を設計し、中国でその部品を製造して製品を組み立てるのが通常の流れです。すると日本の設計者と、中国の部品メーカーや組立工場とのコミュニケーションがうまくいかず、設計意図と異なる不良品や製品が発生するケースが後を絶ちません。

 私がプロジェクターの製品化設計を担当し、両者の橋渡しを務めた時も、日本の設計者から「中国の部品メーカーや組立工場は指示通りに造ってくれない」と愚痴をこぼされました。

 しかし、トラブルに見舞われない設計者もいて、そういう設計者はたいてい中国の部品メーカーなどとうまく渡り合えているのです。何が違うのか。自分なりに分析したところ、トラブルの原因の多くは、日本人設計者が図面でも会話でも正確にきっちりと情報を伝えない点にあるという結論に達しました。一言で言えば「曖昧」なのです。

「外れなきこと」は通用しない

具体的にはどんな事例があるのでしょう。

小田氏:例えば、板金部品にナットを埋め込む設計になっているとします。板金部品とナットの間の嵌合(かんごう)力を図面に記述するのですが、「外れなきこと」「ガタつきのないこと」としか記述しない設計者がいます。これではどれだけの力を使ってもナットが板金部品から抜けないのか、外れないのか分からない。

 本当は「10Nで引っ張っても外れないこと」と記述すべきなのに記述していない。すると中国の部品メーカーは、「1Nで引っ張っても外れない」レベルの部品を造ってしまうケースがあるのです。

 日本の設計者はこの事態にあきれてしまいます。「普通10Nくらいで引っ張っても外れないように造るだろう」と。確かに日本では、この程度の曖昧な記述でも通用しているという実情があります。長年付き合いのある部品メーカーならそれまでの経験で、曖昧な記述から必要な強度を推し量ってフォローしてくれるからです。しかし、中国では通用しません。

中国の部品メーカーに問題があるのではないでしょうか。

小田氏:違います。中国に問題を抱えているメーカーが存在するのも事実ですが、このケースで言えば、しっかり正確に情報を伝える図面を描かなかった日本の設計者に責任があります。日本の技術力のある部品メーカーや町工場のフォローを前提に描かれた曖昧な図面は、世界標準ではありません。この意識を変えなければ、中国だけでなく世界に通用する設計力を持ち得ないでしょう。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら