「製品や生産設備にはどの材料が適するか、どのように加工すべきか」といったことを判断して選択するためには、材料の「性質」を見定める必要があります。前回までの2回では、材料に外部から力を加えたときの変形や破壊のしにくさなどを表す「機械的性質」、つまり頑丈さとして「剛性」と「強度」について説明しました。剛性は「変形しにくさ」、強度は「変形しても元に戻る度合いと破断しない度合い」です。

 しかし、機械的性質を示す指標はこの2つだけではありません。今回は「硬さ」と「粘り強さ」について取り上げます(図1)。剛性や強度が、人間でいえば骨格や筋肉量のような基礎体力だとすれば、硬さと粘り強さは実際の試合で示す実力といったイメージです。硬さも粘り強さも、さまざまな物性が複合的に影響して決まる性質だからです。

図1 機械的性質の全体像
物体の機械的性質は、「頑丈さ」と「硬さ」、「粘り強さ」の3つに分けられる。「硬さ」とは材料表面の抵抗力。材料にものがぶつかった時などの物体の変形しにくさや傷つきにくさだ。粘り強さ(靭性)は、急激な力を加えた時の壊れにくさだ。(資料:西村 仁)
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硬さは試験結果から算出する

 「硬さ」とは、材料表面の抵抗力です。もう少し平たく表現すると、材料表面にものがぶつかったり、押し付けられたりした時に、表面が変形する/傷つくといった変形のしにくさとなります。

 「『変形しにくさ』なら、『剛性』と何が違うのか?」という疑問、ありますよね。もちろん、両者は異なるものです。例えば、剛性は弾性範囲の性質ですが、硬さは「傷のつきにくさ」も対象となるので塑性変形、さらには破断後の領域まで含みます。

 「硬さ」の定義を学問的に解説しようとするとかなり難しくなります。いつ果てるともなく議論するのが目的ではないので、ここでは以下のポイントだけ覚えておいてください。

 まず、硬さは試験結果からしか求められません。ここが、材料固有の「縦弾性係数」と材料の断面形状で決まる「断面二次モーメント」を乗じれば算出できる剛性との違いです。硬さを算出する計算式はありません。日本工業規格(JIS)などで定められた試験を実施し、その結果を数値化した相対的な指標です。

 日本工業規格(JIS)では主な硬さの指標として、「HRC」(ロックウェル硬さ)と「HV」(ビッカース硬さ)、「HB」(ブリネル硬さ)などを定めています(図2。いずれも、硬さ試験の方法が決められており、いずれも対象となる材料の試験片の上に金属球などの「圧子」を押し付けた際、試験片の表面に生じるくぼみの深さなどを測定して換算・数値化したものです。押し付けるものの形状や、くぼみの測定方法が異なるだけで、あくまで試験結果であることに変わりはありません。

図2 主な硬さ試験
「ロックウェル硬さ」などの硬さや粘り強さは、材料の試験片の上に金属球などの「圧子」を押し付けた際、試験片の表面に生じるくぼみの深さなどを測定して数値化したもの。硬さの種類などによって、押し付けるものの形状や、くぼみの測定方法が異なる。(資料:西村 仁)
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* ゴムのような弾性体では、試験片を材料の上に落として跳ね返った時の高さで硬さを数値化する「HS」(ショア硬さ)を用いる。

 例えば、HRCは円すいや球形の圧子を、所定の方法で押し付けて生じたくぼみの深さを測定します。HVは、正四角すいのダイヤモンド圧子を押し付けて生じたくぼみの、対角線の長さを測定します。

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