ものづくりに関わる技術者に材料の知識は欠かせません。材料は製品そのものだけでなく、製品を造り出す生産設備や治工具にも使用します。材料の知識として重要なものの1つが「頑丈さ」です。「設計した製品にどんな材料を採用するか」「生産設備や治工具の部品にどの材料を使うか」といった選択をするのに、材料の頑丈さを把握するのは必須なのです。

 前回(2019年4月号)では、頑丈さには一般的に「剛性(変形しにくさ)」と「強度(変形しても元に戻る度合いと破断しない度合い)」という2つの基準があることを説明しました。このうち今回は剛性について取り上げます。

 剛性の「変形のしにくさ」は、弾性変形の範囲(弾性範囲)での現象です。弾性範囲とは、各材料に固有の物性である降伏点(材料が伸び切り、元に戻らなくなる力の大きさ)以下の力が加わった場合です。製品や生産設備、治工具の構造部品では基本的に、加わる力が「弾性範囲」に収まるように材料を使用します(図1)。力が加わると多少変形するものの、元に戻れば問題なしと判断するのです。

図1 材料の変形のしにくさを示す剛性
剛性は弾性変形の範囲(弾性範囲)で現れる材料の性質。製品や治工具の構造部品は基本的に弾性範囲で使用する。(出所:西村 仁)
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 とはいえ、変形が大きすぎれば機能や性能を満たさなくなる可能性もあります。その場合には剛性を満たしているのかを確認する作業が必要となります。では、必要な剛性を満たすにはどうしたらいいのでしょうか。

剛性を示す縦弾性係数

 剛性の指標となる材料物性の1つが、前回でも説明した通り縦弾性係数(ヤング率)です。縦弾性係数の数値が大きいほど変形しにくい材料となります。縦弾性係数は材料の大分類で決まっていて、動かしようがありません。つまり材料を選んだ時点で確定します。例えば、縦弾性係数が206×103N/mm2の鉄鋼は、71×103N/mm2のアルミニウム合金よりも剛性が3倍の材料となるわけです。

 ところが実際の部品の剛性は、材料の縦弾性係数だけでは決まりません。ここが剛性を判断する時のポイントです。覚えておきたいのは次の公式です。

曲げ剛性=縦弾性係数×断面二次モーメント

 「曲げ剛性」とは、力が加わった際の「曲げ変形のしにくさ」です。例えば材料(棒材など)の片方を固定して、固定していないもう片方の先端に力を加えた際の「変形しにくさ」になります(図2)。

図2 曲げ剛性を判断する試験例
例えば棒材の片方を固定し、もう一方の先端に集中荷重を加えた場合や、全体に分布荷重を加えた場合の変形のしにくさで曲げ剛性を判断する。棒材の両端を固定する場合もある。(出所:西村 仁)
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 先述したように、縦弾性係数は材料の大分類で決まります。これに対して、「断面二次モーメント」は材料の断面形状で決まります。すなわち断面形状の設計で決まる変数なのです。この断面二次モーメントも、数値が大きくなるほど変形しにくいことを意味します。つまり、変形しやすいアルミ合金でも断面形状の工夫次第で断面二次モーメントの数値を大きくできる、つまり曲げ剛性を高められる(頑丈にできる)のです。アルミ合金に限らず、どんな材料でも、断面形状の工夫で頑丈にできます。

 形状の工夫について、具体例を挙げて説明しましょう。例えば、文房具であるプラスチック製の下敷きを、横向き(広い面が地面と平行になる)に持つと自重でたわみ、変形します。しかし、縦向き(広い面が地面に対して垂直になる)に持てば自重でたわまず、変形しません。自重以外に、垂直方向にある程度力を加えても変形しないほど丈夫になります(図3)。このように軟らかいプラスチックでも、断面形状(下敷きの例で言えば横向きか縦向きかの違い)によって頑丈にできます。

図3 断面形状(向き)によるたわみの違い
加える力の大きさが同じでも、材料の断面形状が違えばたわみ量も異なってくる。(出所:西村 仁)
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