日東電工は、2016年3月に開設した研究開発施設「inovas」を活用し、オープンイノベーション(OI)を活性化している。

 創業100周年である2018年度の売上高は8600億円(見込み)。同社はこれを2020年度に1兆円に押し上げる中期経営計画(中計)を掲げている。そのためには、中計で今後の成長戦略領域と位置付けている「次世代モビリティー」「情報インターフェース」「ライフサイエンス」でさらなる飛躍を図るための新製品や新事業が欠かせない。その起点となるのがinovasだ。

ガラス張りの部屋、大部屋の実験室

 「研究開発拠点におけるOIの拠点にしようと、サプライヤーや顧客を交えて、技術や将来の取り組みを議論している」。日東電工取締役専務執行役員CTO・CIOの梅原俊志氏は、inovasの役割をこう語る。

 inovasの特徴は、研究開発機能だけでなく、顧客との共創のきっかけを探るイノベーション機能と人材育成機能を、兼ね備える点にある。4階建ての建物に研究開発、イノベーション、人材育成の3つのエリア(ゾーン)がシームレスに存在している。従来は、別々にあった研究開発施設と人材育成施設を融合した上で、OIに向けて新たにイノベーションゾーンを設けた。

 同ゾーンは、建物中央の吹き抜け「inovas Garden」を中心に、周囲にミーティングエリアや打ち合わせスペース、簡易ラボなど大小さまざまな部屋を設けている(図1)。社内外の人同士による偶発的なコミュニケーションなどによって新たな発想の誘発を狙っているという。

図1 中央の吹き抜け「inovas Garden」
イノベーションゾーンはここを中心にさまざまなスペースが設けられている。(写真:行友重治)
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 同ゾーンのメインフロアである3階でまず目に付くのが、「Big Bang」と名付けた20角形の広い多目的スペース(図2)。室内は机や椅子を自由にレイアウトでき、壁は20面が全てホワイトボードとなっており、会議や打ち合わせで出てきたアイデアをすぐに書き込める。

図2 イノベーションゾーンにある多目的スペース「Big Bang」
20角形の部屋に大型スクリーンなどを備える。議論を活性化させるため、思いついたアイデアなどをすぐに書けるよう壁面は全てホワイトボードになっている。 (写真:行友重治)
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 その隣には「Nova」と名付けたプロトタイプ製作用のスペースがあり、卓上型の工作機械や3Dプリンターを備えている。また、隣接して社外の人とのミーティングや実験、開発品のデモなどに使う「Mars」「Venus」といった“外部連携ラボ”スペースを配する(図3)。

(a)
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(b)
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図3 プロトタイプスペース「Nova」と外部連携ラボ「Mars」
Novaには小型の工作機械や3Dプリンターを備える(a)。外部連携ラボは社外のパートナーとの利用を想定したもの。  (写真:行友重治)

 この他、3・4階には、サテライトルームと呼ぶガラス張りの打ち合わせスペースを幾つも配置。それぞれ室内インテリアの趣を変えてあり、オープンかつリラックスした雰囲気を演出して新しいアイデアや活発な議論の誘発を狙う。

 研究開発ゾーンも、従来とは大きく変えた。以前は、研究テーマごとに部屋が分かれていたが、inovasでは3、4階に大部屋の実験室を設けた。テーマの垣根を越えて共創やアイデア共有を図るためだ。2階の執務スペースも仕切りのないオープンスペースとなっており、フリーアドレス制で300人ほどが働いている。

赤字の危機感から自前主義を脱却

 実は10年ほど前までは日東電工も自前主義だった。しかし、2008年のリーマン・ショック後に赤字に転落。顧客の価値観や要求が多様化する中、従来のやり方では生き残れないと危機感を強め、他企業や大学とアライアンスを組んで技術や製品を開発する方向へと大きく舵を切った。

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