アディティブマニュファクチャリング(Additive Manufacturing=AM、付加製造)/3Dプリンティングは、マスカスタマイゼーションの実現可能性を生産面から支える重要な技術である。かねてより、試作品のような個別生産を効率的に行う手段として注目を集めており、材料や精度面での改良が進んで実部品の製造装置としての利用も広がってきた。実際、航空宇宙分野などでの採用例が増え、自動車業界でも一部の量産車の部品で採用されるようになっている*1

*1 ドイツBMWは、2018年4月に日本で発売したオープンカー「BMW i8 ロードスター」に、AM装置で造型したAlSi10Mg製部品を採用。従来のガラス繊維入りポリアミド(PA)に比べて、強度は10倍になり、約40%軽量化した。6万個までであれば、マグネシウム合金のダイカスト成形よりも低コストだという。

 Part1総論でも紹介したマスカスタマイゼーションの事例のいくつかでは、AMが部品の生産手段として使われている。ただし、個別品とはいえ累積すればある程度の量となるマスカスタマイゼーションの生産手段としてはさらなる生産性の向上は課題だ。ユーザーからの生産性向上の要求を受け、AM装置メーカーもこれに対応した技術開発を進めている。

基本原理は断面形状の積み重ね

 まず、AMがなぜマスカスタマイゼーションに向いている生産方法なのかを整理しておこう(図1)。AMにはさまざまな手法が実用化されているが、基本原理は立体モデルを断面形状の積み重ねで造形することだ。「積層造形」と呼ばれるゆえんである。

図1 アディティブマニュファクチャリングの特徴
AMの基本原理は、断面形状の積み重ねによる立体モデルの造形だ。使用できる材料や断面形状の硬化方法などでさまざまな手法が開発されているが、1つずつ形状が異なるような部品を効率的に生産するのに向いている。
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 部品の形状(3Dデータ)を輪切りにすれば2Dの断面形状データが得られ、AM装置の入力データとして使える*2。型の設計や加工、工具のツールパス作成といった工程も不要で、実際の造形ヘッドの動作や材料の噴射位置などの制御はAM装置側で自動的に処理する場合が多い。つまり、設計データが完成してから造形を開始するまでの時間が短く、カスタマイズされた個別形状でも時間的なロスは少ない。

*2 種々の条件設定やサポート部の形状作成、場合によっては造形中の変形を見越した形状の編集は必要である。

 加えて、型が不要なため初期コストの割合が小さく、同一形状の部品を造る場合でも総生産コストは個数と比例関係になる。つまり、同じ形状の部品を造る個数が少なくてもコストアップ(単価の上昇)の要因にはならない。

 この2つ目の理由、型が不要という点に関しては、実は切削加工も同じだ。しかし、断面形状の積み重ねであるという基本原理のために、工具との干渉という切削加工特有の制約がない(図2)。つまり、AMは造形できる形状の自由度が高く、複雑な形状の部品でも一体造形できる*3

図2 AMの位置づけ
同一形状での大量生産であれば、射出成形や鋳造、鍛造などの型を使った工法の生産性が高い。個別形状の一品生産であれば切削加工でも対応可能だが、工具の干渉などを考慮すると形状の自由度には制限を受ける。その点では、AMが優れている。
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*3 複雑な形状の部品を一体造形できるという特徴は、組み立てや接合などの工数削減による低コスト化、締結部の削減や中空構造の採用などによる軽量化にもつながる。

 こうしたAMの特徴が、マスカスタマイゼーションに向いているとされる理由だ。ただし、生産性についての向上を望む声は強かったのが実情だ。そのため、AM装置メーカーなどは造形スピードの向上に加え、複数の造形装置を組み合わせて連続造形できるシステム、造形の周辺工程も含めてモジュール化して生産ラインを構築できるようにするシステムなどの開発を進めている。

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