ダイキン工業が日本で25年ぶりに稼働させた新しいエアコン工場である臨海工場 新1号工場(以下、新工場)。マスカスタマイズ生産の実現、IoTの積極的な導入に加えて、新工場の目玉となるのが、需要変動への強さだ。それに加えて生産開始までの立ち上げが速く、小規模生産でも利益を生み出せる理想的な工場となっている。これを可能にしたのが「モジュールライン」である。

需要変動への対応が課題

 製造業がグローバルで勝ち抜くためには、工場はさまざまな問題を乗り越える必要がある。中でも、難題として多くの企業の頭を悩ませるのが、需要変動への対応だ。このためには顧客が必要な時に、必要な製品を、必要な量だけ適切なコストで造れる生産ラインを構築しなければならない。

 しかも、ダイキン工業が主力とするエアコンの場合は、この問題の難易度が跳ね上がる。エアコンは気候や景気によって需要が特に大きく変動する製品だからだ。例えば、ひとたび猛暑になれば一気に大量の受注が舞い込む。経済成長が著しい新興国ではエアコンの販売台数が増加基調にあるものの、経済の安定性に欠けるため、突然何かが起きて受注に急ブレーキがかかることもある。

 こうした激しい需要変動に追従できず、需要に対して生産量がショートすれば販売機会を失い、競合企業に売り上げを譲ることになる。だからといって、過剰な生産能力は需要減少の局面ではコストアップ要因になる。もちろん、需要よりも多く造りすぎれば売れ残って在庫を抱え、値崩れして利益率が下がる。エアコンほど環境は厳しくなくても、多くの製品が同様の問題を抱えているはずだ。

最寄化戦略で乗り切る

 この難題を乗り切るために、ダイキン工業が掲げたグローバル生産戦略は「市場最寄化戦略」である(図1)。それぞれの国や地域のニーズを満たした製品を、現地で生産して提供する考えだ。生産する場所が市場に近ければ、その分、顧客に製品を届けるまでのリードタイムを短縮(スピードを速く)できる。すると、天候や景気の変化で需要が変動してもより素早く対応し、販売チャンスを広げて、かつリスクを緩和できる。加えて、為替変動のリスクに強いという利点もある。

図1 ダイキン工業が掲げるグローバル戦略「市場最寄化戦略」
製品の開発も生産も現地化を徹底し、各市場の近くで製品を造る。これにより、天候や景気によって大きく振れる需要変動を吸収する。
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 とはいえ、市場最寄化戦略はいわゆる現地化の徹底であり、考え方自体はそれほど珍しくはない。現に、同様の戦略を「地産地消」などと呼び、長い間掲げてきた日本企業は多い。だが、掛け声だけにとどまっているケースが多い。ひとえに、コスト競争力を維持しながら現地化を徹底するのが難しいからである。

 コスト競争力を重視する多くの日本企業が頼るのは、いわゆる一極集中の生産方法である。すなわち、人件費の低い新興国に工場を造り、量産効果を生かすべく製品を大量生産して世界の各市場に輸出するという方法だ。確かに、この方法では製造コストを下げられる。ところが、輸送に時間がかかって顧客に即納できないため、販売機会を逸したり、売り時を失って値崩れしたりするリスクが常につきまとう。つまり、需要変動に対応できない。

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