「組立工場の作業者を確保できないとトヨタ自動車ですら悩み始めている」。産業用ロボットメーカーの社員はこう明かす。今、日本の製造業で人手不足が深刻な域に達している。

 大手企業の国内工場は賃金や待遇の良さもあって、これまでは作業者を集めやすいと言われてきた。ましてや、売り上げ規模や知名度が日本メーカーの中で突出しているトヨタ自動車の国内工場なら、人手不足などとは無縁のはずだ。ところが、現在はその同社でも作業者を集めるのに苦労しているというのが実情なのである。

 中小企業の場合はさらに深刻だ。工場の指導を手掛けるジェムコ日本経営本部長コンサルタントの古谷賢一氏は「ずっと募集しているが人が全く来ない』と嘆く中小企業の経営者は多い」と指摘する。何とか人を確保できるのは、企業が集積した地域に立地する大企業くらいだという。

 経済産業省が2018年6月に発行した「2018年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」も、国内製造業の人手不足の深刻化に対して警鐘を鳴らしている1)。日本の製造業を対象に同省が実施した「人材確保の状況」に関するアンケートでは、人材確保が「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」と回答した企業は2016年から2017年のわずか1年で22.8%から32.1%と9.3ポイントもアップした(図1)。しかも、「特に課題はない」という回答が19.2%から5.8%と13.4ポイントも減っている。

図1 「人材確保の状況」に関するアンケート結果
日本の製造業を対象に経済産業省が実施した。人材確保が深刻化しており、ビジネスに影響が出ている企業が増えている。「2018年版ものづくり白書」を基に日経 xTECHが作成。
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 人手不足の背景には、まず足下の堅調な業績がある。受注が好調で増産を計画する日本企業は少なくない。加えて、次世代製品に向けた技術開発が立ち上がってきた。自動車の電動化や新材料、省エネといった次世代向けの技術開発が加速しており、それに伴って生産も活発になってきているのだ。従って、多くの工場が人手を渇望している。

 その一方で、日本では少子高齢化が猛烈な勢いで進んでいる。厚生労働省は15~64歳の「生産年齢人口」が、2015年から2030年の15年間で935万人減ると試算している。工場から熟練者がどんどんいなくなるのに、若い作業者はなかなか入ってこない。この傾向は地方にいくほど強く、「工場や倉庫を新たに立ち上げる場合、最優先事項は人を集められるかどうかだ」と日立製作所の社員は語る。

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