自動車のパワートレーンは今後、どのように動いていくのか。パワートレーンに関連する部品や材料メーカーは事業戦略をどのように見極めたらよいのか。「技術者塾」において「事業戦略を見極める 世界の自動車用パワートレーンの最新・将来技術と規制動向」の講座を持つK&Kテクノリサーチ代表(元デンソー)の加藤克司氏に聞いた。 (聞き手は近岡 裕=日経 xTECH)

K & K テクノリサーチ代表(元デンソー) 加藤克司 氏

パワートレーン 自動車のエンジンなどの原動機が発生する回転力を駆動輪へと伝える役割を担う装置類。エンジンやクラッチ、トランスミッション(変速機)、プロペラシャフトなどを含む動力伝達装置の総称である。

パワートレーン分野において今、注目すべき動きは何ですか。

加藤氏:最近の自動車産業は100年に1度と言われる大きな変革期を迎えています。自動運転やコネクテッド、シェアリング、電動化の4つのキーワードの頭文字を合わせた「CASE」という大きな潮流が押し寄せています。

 その1つである電動化(Electric、xEV)の対象となるクルマのカテゴリーには、[1]電気自動車(バッテリーEV、BEV、レンジエクステンダーEVを含む、以下EV)、[2]ハイブリッド車(HEV)、[3]プラグインHEV(PHEV)、[4]燃料電池車(FCEV)、の4種類の電動車がありますが、電動化の流れは今後、さらに世界で広がっていくと思われます。

 もう1つ注目すべき点は、パワートレーンの熱効率向上です。地球温暖化の重要な対策である、車から排出される二酸化炭素(CO2)排出量の規制が今後ますます厳しくなっていきます。CO2排出量を低減していくには、電動化に加えてもう1つ重要な取り組みが必要です。それが、パワートレーン系の熱効率向上(省燃費)技術で、各自動車関連企業が注力して取り組んでいるテーマです。

 HEVとPHEVはエンジンを搭載する電動車(xEV)です。最も多くHEVを生産しているトヨタ自動車は、「2030年になっても、550万台の電動車のうち450万台は(HEVやPHEV用として)エンジンを搭載する」と言っています。世界のCO2排出量規制のうち、CAFE(企業平均燃費)規制値をクリアできない自動車メーカーは、罰金を課せられるか、クリアできているメーカーからクレジットを購入する必要があります。そのため、HEVやPHEVに搭載するパワートレーンの熱効率も高めなければなりません。

電動車の中でもEVの今後の動向に最も注目が集まっているように思います。EVの今後についてどう見たらよいでしょうか。

加藤氏:2025~30年といった短いスパンで考えると、EVが世界で主流になるとは考えにくいでしょう。ただし、国によって事情は異なります。中国は世界一のEV大国を目指し、強力なEV政策を推し進めており、2030年頃には中国で販売される小型車の約30%がEVになる見込みです。しかし、それ以外の国ではそれほど急速に普及せず、10%にも達しないと私は予測しています。

 EVが今後大きく普及するかどうかの最大の課題は電池です。ガソリン車と比べると現在の電池を使用するEVはまだまだ使い勝手が良くありません。まず、EV航続距離(1充電後の航続走行可能距離)が短い。最近のEVの平均航続距離は300~400kmですが、ガソリン車のざっと半分です。しかも、これはある決められた走行モードをエアコンオフの状態で走行した時の「公称値」であり、実際に市場で走行すると7~8割程度の航続距離しか得られません。

 最も大きな要因はエアコンです。エンジン車では暖房時にエンジンが発生する余剰熱量を有効利用していました。ところが、EVではエンジンとは違って大きな熱源がないため、室内の暖房や冷房のために電池の電力を多く使うヒーターかヒートポンプ式エアコン、電動コンプレッサーを使っています。これがEV航続距離を2~3割引き下げるのです。

 さらに言えば、高速道路を走ると一気に航続距離が落ちます。モーターは高速領域でトルクが下がり、エネルギー利用効率が低下するからです。高級車のEVの中には200km/時以上の高速で走行できるクルマもありますが、一般的にEVは低速重視の設計で、高速走行が苦手なのです。

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