「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
最近、トラブルや不祥事などの発生で経営危機に陥る日本企業が目立ちます。そのことに危機感を抱いた社長から、現場の管理をこれまで以上に強化するようにと管理者に通達がありました。しかし、具体的な方法が示されたわけではありません。問題が発生した際に損失や負の影響をできる限り抑えるために、トヨタ自動車の管理者が心掛けている事があれば参考にさせてください。

編集部:以前よりもコンプライアンス(法令順守)が厳しく問われる社会になったのに加えて、スマートフォンによるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及などで、今は企業が一旦問題を起こすと、その負の印象は燎原(りょうげん)の火のように広がっていくようになりました。他にも、革新的な技術・サービスの登場や顧客ニーズの多様化によってビジネスモデルが陳腐化したり、予期せぬ災害の影響を受けたりして、経営に深刻な打撃を受ける企業が目立ちます。

 理想はもちろん、深刻な事態に陥らないように防ぐことですが、避けられない場合もあるのが現実ではないでしょうか。

肌附氏—その通りです。確かに、問題やトラブルは未然防止が管理者にとっての基本です。特に、安全や製品の品質に関するトラブルは、万が一でも発生すれば取り返しのつかない事態に陥るのですから、起こさないように細心の注意を払う必要があります。

 そうは言っても、現場は“生き物”。顧客のニーズや取引先の状況、世界の景気、気象や天候など、さまざまな事象が時々刻々と変化し、それらを積み上げた総合的な影響を受けるのが現場です。従って、どうしても想定外の事態が生じてしまう。このことを経験から学んでいるトヨタ自動車では、生きた現場を預かる管理者に問題解決能力を身に付け、磨き上げるように求めています。

編集部:職場を守るべき管理者にとって、極めて重要な能力ですね。しかし、「言うは易く行うは難し」の典型的な例ではないかとも思います。

肌附氏—問題解決能力とは、発生した問題を的確かつ迅速に解決に導く能力のことです。日々の業務で生じる細々とした問題に対してもそうですが、重大な問題やトラブル、甚大な災害が発生した際には、特に管理者の問題解決能力の手腕が問われます。

 こうした重大な問題が起きたときに管理者が採るべきなのは、自ら先頭に立って問題解決に臨む行動です。自分は専門家ではないからとか、現場の事情に詳しくないからといった理由、もしくは言い訳で、問題の解決を部下に丸投げしてはいけません。これでは問題を早期に解決できないどころか、「あの上司は責任を部下の誰かにかぶせるのではないか」などと部下から疑いの目で見られ、信頼を失うケースすらあります。逆に、自ら率先して動けば、問題解決に対する上司の本気の度合いを部下に示せるのです。

編集部:重大問題の発生時に、トヨタ自動車の管理者は、まず何を行うのでしょうか。

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