スーパー電波望遠鏡「アルマ(ALMA=Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)」は66台のアンテナで構成された世界最大の干渉計である。微弱な電波を天文学者たちがイチから開発した半導体を使った受信機でキャッチし、データに変える。このデータを解析する相関器のハードウエアとソフトウエアの開発で活躍したのが富士通の技術者たちだった。

 アルマ望遠鏡は、最大で66台のアンテナが同時に同じ天体からの電波を受信し、デジタル処理して観測する「干渉計」だ。受信機がキャッチしたデータは、相関器と呼ぶスーパーコンピューターで処理して初めて天体の姿を見せる。アルマの相関器のハードとソフトの開発、製造を担当したのが富士通である。

 2012年3月、第1回目のアルマ現地取材で初めて標高5000mの山頂施設(AOS)へ登った。地球上で最も乾燥した地、大気中の水蒸気量が最も少ない場所として選ばれたのが標高5000mのチャナントール高原のはずだが、驚いたことに山頂の広大な現地は一面の銀世界だった(図1)。

図1 山頂施設の建屋の中から見た外の風景
2012年3月に初めてアルマ山頂施設を訪れた際は一面の銀世界だった。 (写真:山根一眞)
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 アンデス地方が広い範囲にわたり、経験したことがない降雪に見舞われたのは、気候変動(地球温暖化)の影響によるものだったようだ。

 案内してくれた立松健一さん(現・野辺山宇宙電波観測所長)から、山頂は太陽の紫外線の反射が強く裸眼では角膜が炎症を起こすため「サングラスが必須です」とくぎを刺されていたのだが、私には平地の半分という酸素不足が何ともきつかった。

 頭がボーッとするので指にはめた小さなパルスオキシメーター(血中酸素濃度計、日本人が発明)の数値を見ると60。90は維持しておくのが望ましいというので渡されていたスプレー缶の酸素を時折吸っていたが、たちまち空になってしまった。

 山頂施設の建屋内も酸素濃度は外と同じで気を失いそうになった。この建屋内は酸素濃度を平地と同じ設備とするはずだったそうだが、予算不足で実現していなかったのだ。所々に設置してある緊急用の酸素ボンベに手を出したい思いを噛みしめながらふらふらと施設を見て回ったのをよく覚えている(図2)。

図2 山頂施設の建屋内で見た酸素ボンベがある緊急時対処室
(写真:山根一眞)
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