西日本鉄道天神大牟田線で走行中の電車の扉(引き戸)が開いて閉まらなくなった。約2年前の検査の際に平座金の取り付け位置を間違えたのが直接の原因だった。扉が開いたことを運転士に知らせるセンサーも機能しなかった。加えて車両の検査体制だけでなく重大インシデント発生時の危機管理にも教訓を残した。

 2018年5月15日、福岡県大牟田市と福岡市間を走行する西日本鉄道・天神大牟田線*1で、列車の走行中に扉が開く重大インシデントが発生した(図1)。原因の詳細は後述するが、2016年9月に扉を検査した際、扉のつり部を構成する1枚の平座金の取り付け位置を誤ったのが原因だった。

図1 走行中に開いた扉の状況
走行中に開いた扉のつり部(a)と、2枚の戸を駆動する「ドアエンジン」(b)。(写真:運輸安全委員会)
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*1 天神大牟田線は福岡県を南北に走る動脈である。西鉄福岡(天神)駅を起点として太宰府市や久留米市などを経由し、大牟田駅までの74.8kmを結ぶ。2018年度の輸送人員は1日平均26.7万人。当該の車両は西日本鉄道の主力車両「5000形」である。天神大牟田線で運用する306両のうち、5000形は最も多い123両を占める(2019年3月末)。川崎重工業が製造した。

 同インシデントが発生したのは、大善寺駅(同県久留米市内)から西鉄福岡(天神)駅(福岡市)に向かう4両編成の上り普通第2152列車の先頭から3両目左側最後方の扉。16時49分過ぎに白木原駅を出発する際、扉が完全に閉まっていないことに、扉近くにいた乗客が気付いた。さらに出発後は左右2枚ある戸(扉を構成する2枚の板)のうち、車内から見て左側の戸だけが列車の揺れに応じて開閉を繰り返していたという。次の春日原駅を出発後も同様だった。その後、ホームにいた旅客から異常を知らされた車掌が開いている扉を確認。次の雑餉隈(ざっしょのくま)駅において助役が手動で扉を閉めて施錠した*2。詳細は後述するが、次の井尻駅で乗客を降ろして運転を打ち切った。

*2 助役(運転取扱担当助役)は、運転士の指導のために添乗していた。

 当時、列車には乗客約250人、乗務員3人(運転士、車掌、助役)が乗車していたが、幸い転落者や負傷者はいなかった。

 国土交通省の運輸安全委員会(以下、調査委員会)は同事故を重大インシデントに認定して調査を実施。2019年8月29日に調査報告書を公開した。明らかになったのは扉の機構に由来する課題だけではない。西日本鉄道による車両検査体制やインシデント発生当時の危機管理の甘さも見えた。報告書の内容を基に原因を解説する。

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